困難に迎え
シン達がシリマツによってもたらされた情報の中に、この組織が存続出来た理由として、地熱による自家発電装置や、耐久力は無いが、植物製の記憶触媒ディスクの製造工場があると言う事だ。それは、どうにか自給自足出来る事によって、古い機械を修理も重ねながら動かして来たと言う事だった。PCにおいても、地下奥に大量のストックがあったお陰で、かろうじてそれも稼働させる事が出来た。食糧もそうだ。いずれそうなる事を予想されて、どこのシェルターでも地下奥に大量に保管されているだろうと言う事だ。当然、賞味期限が100年もある筈が無い。地下から湧きだすミネラルと乳酸菌の培養、クロレラ、微生物由来の酵素やその他によって、食物は生産され、食を繋いで来られたのだ。植物工場や、農地も当然あると言う事だ。
ランが、出発直前にシンに、こそっと言う。
「組織外に一端出たら、もう普通の会話も出来ないからな、ちょっとだけ聞こえた情報を伝えておく。どうやら、組織外に出ると言う事は、食える動物の調査も入っていると言う事だ。100年前以前に人類は、他の動物を殺しまくって食って来た。俺達は組織内で飼育・繁殖されている魚等が主なタンパク源だが、飼育動物はこの間に、オオコオモリが食性ピラミッドの頂点であったとしても、爆発的にその動物達が増えているかも知れないと言う事だ」
「そうか・・成程。その100年前の料理のデータは学校でも教えて貰った。しかし、現在は殆ど固形のものと飲料系のものだけだもんな。肉と言ってもソーセージだしなあ」
「俺達、そう言う食事で育った者には、今さら旧時代の食事が合うかどうかは分からないが、これから先の事を考えれば、人類が再び食性の頂点に立つには、オオコオモリやカラス以上の力を持たないといけないと言う事になる」
「ふ・・それが、殆ど手も足も出なかった現状を踏まえての話だよな」
「ああ・・でも、俺達には知恵が残っている。道具を生み出す力も残っている。オオコウモリやカラスが突然変異で進化したとしても、そんな道具まで生み出す力はねえよ。俺はそう思う」
「俺も同感だ」
シンも頷いた。
シンとランは、今までも気が合い話も良くしていた。行動も殆ど一緒になるから、阿吽の呼吸で動ける。その点ではサテンもウテンも双子だ。息はぴったり。組織的に見ても、3人組みと言う形が出来上がっている。それはシリマツと言う者が、恐らく作戦参謀として優秀だからだろう。そしてエライ班長は、トップに立てる器だ。今までのどのリーダーよりも頼りになるし、指令も的確で具体的だ。
そのシリマツが、組織外に出る直前に、指令した。