困難に迎え
それから、様々な訓練が行われた。どれも、今までシン達が経験した事の無い、斬新なものであり、具体的な方法だと感じるものだった。中でもバーチャル映像を多用した、VRなのだが、実際にオオコウモリと遭遇し、渡された武具で対峙し、HITした時にはオオコウモリの臓腑が飛び散り、夥しい血がどくどくと流れる。逆に自分たちが攻撃を受けると激しい痛みを伴う、これは電気刺激だと思われるが、闘う意識すら殺がれるような訓練だった。何より、重視されるのはモチベーションの維持といかに敵生体から逃れる、ダメージを食わないかと言う訓練なのだった。彼らは流石に選ばれた10名であった。その精神的なものもクリアして、この日を迎えた。
エライ班長は訓示をする。
「準備が整った。数ヶ月間であったが、諸君らのここまでの訓練と情報収集力・判断力は、評価出来ると思う。それに、私にとっても指揮すると言う事の大切さ、重要な部分と言うものも、シリマツ官吏の助言で良く理解出来た。しかし、今一度言う!決して無理をしない事、敵生体武器において攻撃を行わない事。今回初めて使用する音波機器は、オオコオモリによる超音波を防ぐ為に、諸君達には、耳栓をして貰う。よって、全ては体に振動する信号音での会話・指令となる。進め、撤退、集合、そして重要な事は目印を付ける事、音波発信機を設置する事が最重要行動だ。強化服も開発したが、それは決して諸君達が生体武器から身を守る為にでは無い。動きやすくするために考慮されたものだ。ここまでの行動は理解出来ているな!」
「はい!」
シリマツ以下、11名は大きな声を上げた。これは、チームと言うより小部隊と言うべきだ。れっきとした精鋭部隊なのだ。その為の訓練を、今まで誰もが体験した事の無いやり方で行って来た。文明は100年前に壊滅した。故に100年前までの文化が、その時代の支配階級的な意思によって、守られて来た。だから、進化は当然無かったと言える。実動部隊は、敵の正体すら分からず、危険な組織外に次々と送り出されていたのだ。その反省もあり、幸いにも失った命は無かったと言う事だが、その反省とそこまでの積み重ねにより、ようやく恐らく100年以前の資料が、極秘扱いでどこかに保存されていたのであろう。そして100年も経た旧データの取り出し作業も、困難を極めたに違い無い。その時代の最新鋭の科学であろうとも、製造された資材がそんな耐久力を持つ筈が無いからだ。