第三章その三 海を渡る
「ヘッドライトの光は常に前に向いているだろ?だから俺の場合、真っ直ぐに前を見ないで、少し横向き・・つまり、左を見つつ自転車で走っていた。光が通り過ぎた後、残像が少し気になったんだよ。で?シン、リン、黙っているけど、何か意見があるか?」
「うーーん・・分からん。押して見たが、何か細工がある訳でも無い。パネルの連結部は殆ど1ミリ程度の幅で、きっちり周囲とも連結されている」
「ここが特に修復されたとか、何か、例えば点検口のようなものだったとかは考えられないだろうか?」
「仮にそうだったとして、恐らく道路下には、AIがチェックポイントを幾つも設けてあるし、監視システムが作動したいただろうから、殆ど人為的に人が中に入り点検する必要は無かったと思うんだ。それに修復されたのだとしたら、同じ素材を使うだろう?確かにここだけ色が違うと言う部分で修復を思ったんだろうけど、このマグネシウム特殊合金は数100年間変色もしないし、殆ど朽ちないと聞いている。ドームがその見本だ」
「そうか・・なら、行こう。ここがチェックポイントだった可能性もあるからな、つまり、通過するエアバス?の量とかその安全管理用にさ」
「おう・・ダンの今の見解が、一番理に合うと俺は見る。それじゃあ、行こうか・・」
こうして、彼らは先に進む事になった。残りは20キロだ・・ゆっくり走って2時間で着く予定だから、『戒』や『愁』にも良い休息になっただろう。ケンが水を与えていた。彼らの関係は絶大な信頼に基づいていた。もはや家族とでも言うべきものだろう。この第14班全員に小犬が来る。良い相棒になりそうだとそれぞれに思うのだった。
色の違うパネルの箇所は、左側にはあの一か所だけだった。折り返しにまた右側も見てみると言う事で、それならよりはっきりするだろう。何しろ、一事が万事この調子なのだ。人類がいかにAIに頼ってさぼっていたのかが良く分かる。それが無くなった途端に、自立して生きていける手段さえ失うのだ。シンは今自分達がやっている行動が正しい方向なのだと強く思うのだった。
「見えたぞ!」
先頭を行くランが、少し明るくなった、出口?(九州方面からの)入口?(四国方面からの)指差した。ヘッドライトは不要な位に明るくなり、『戒』と『愁』が飛び出そうとした。
「『戒』、『愁』!止まれっ!何が外に待ち受けているか分からんからなっつ!」
2匹の犬はぴたっと止まった。
「おう・・優秀だ。良い子だな、2匹とも」
「ふ・・ケンがすっかり仕込んでいるさ」
リンがにやっとする。その時には、既にそのリンが犬達の前に出ていた。




