第三章その三 海を渡る
「ふ・・シンが俺に、2つの海岸を見て来てくれと言って、俺は『戒』と一緒に電動車で行って、見て来た。確かに九州から本州に架かっていた橋などは、微塵も残って無かったし、当然コンクリートの護岸も無い。あるのは岩だらけの岸壁と砂浜だけだ。俺達の住むここと同じで、何も無い自然そのままの綺麗なもんだったよ」
「まあ、そうだろうな。日本中・・いや世界中ではどこでもそんな感じになっていると想像する」
「俺は、もう1か所にも行って来た。反対側の海だ」
「ほほう・・なかなか冒険家だな、ケン。大胆じゃないか、オオコウモリが電動車であろうとも襲わない保証は何も無いんだぞ?今まで通りにさ」
「ああ・・承知の上だ。でも、そんな事を恐れていたら、俺達は現状の生活で満足しているのかって話だろう?このままで、ずっと死ぬまで生きて行けって言われたら、ランならどうするよ?」
逆にケンがランに聞く。ダンとリンが苦笑い。
「それは・・嫌だな」
好奇心、探求心が人一倍強いランだ。そんな生活で満足出来る筈が無い。
「だろ?そこでだ・・シンが色々言っていたが、T国の話も全く関連の無い事じゃないから先に言った訳だ」
「だから、何を?回りくどいじゃねえかよ、不明生物だの、T国の人類が滅亡しているだの、ドームが破壊されているだのとよ、情報ばかり錯乱しているじゃないか」
「やっぱり、ランは俺をそう言う風に見ていたんだな、分かったよ」
シンが苦笑い。しかし、ランは、
「違う、違う。だって、それなら順を追って話をしろよ、何かお前らのペースにはめられているような気がするからよ、実際に」
「そうだよ、そのつもりもあって、色んな話を一度にした。良いか、ラン・・他の皆もだ。俺達に、今明確な目標があるのか?あったら、聞きたい」
シンがそこで完全にリーダーシップを取っていた。
誰もが返答に困って言葉が出なかった。




