第三章そのニへ 新たな局面へ
「で・・岩山のボスオオコウモリを撃った目的は?勿論、群れの統率を乱す目的だろうがな」
「ああ・・その通り。続々と訓練馴致させた子のオオコウモリを野外に放している。もう50頭を数えた」
「ああ・・シンが提案した、オオコウモリ生体武器のこの時代の馴致訓練だったよな」
「能力と言うのは、当然個体によって違う。覚えるのが早い個体と、遅い個体。性格もある、知能が相当高いと言う事もこの馴致訓練によって分かった。類人猿の標本は第2ドームにあるが、それより上だろうな。だからきっちり仕込むと、ケンと今一緒に行動しているカイと同様に頼もしい相棒にもなれる」
「とんでも無い発想だと思ったが、飼育班、訓練班と言うのも作ったらしいな、お前の提案で」
「その資料は、神野黒服から貰っていた。人間同様のカリキュラムがあるんだ。だから、簡単な言語信号と言うのかな、超音波笛と言うのも、それによって作ったんだ」
「ああ・・」
「その笛の聞き分けの出来る唯一の人間だと思う。リンが居る」
「おう!確かに・・あいつも化け物の一人だ。8キロ先の物も見えるし、聞き分け出来る音域も大変広い」
「その為にリンにオオコウモリの動向を探って貰う事と、群れのリーダーを探して貰う事を頼んである」
「つまり・・ボスを廃し、新たなボスと挿げ替えようと言う策か」
「その通り!それによって、オオコウモリは人間の敵では徐々に無くなると思う。群れの統率を殺ぐと言う目的もあるし、仲間内で争そわせるのも可能だ」
「逆に人間を守る為の生体オオコウモリも誕生する訳か・・どんな武器を持つより頼もしいよな、それは」
シンの狙いが見えて来た。既にここまでシンは進めて来たのである。
シンはなおも語った。
「発電設備が稼働する事は大きい、そして、コウタ班長とラン、お前にも頼んであるが、量子衛星の改造と発射準備は、もっと先になるが、巨大なエネルギーを塔の下の発電設備にも連結させたら、産業資料館の殆どの物を稼働させる事も出来るだろう」
「そこまで考えていたのか、一端は塔下部の噴爆エネルギーを一気に放出する量子発電設備を否定していたが」
「否定では無いよ、そのエネルギーの使い方だ。だってそうだろ?既に量子衛星が今空の上に飛んでいるのに、新たな量子衛星を打ち上げる必要は無い。それに、核搭載の衛星をT国の量子衛星が排除し切れているのなら、もうその目的も必要無くなった。ただ、排除し切れているかどうかの確認は、その先だろう」
「噴爆のエネルギーは、本当に分散できるのか?シン」
ランが、顔を上げてシンに問う。




