第三章そのニへ 新たな局面へ
「で・・延々と喋っていてもしょうが無い。シンはシンで動かしたい者に個別に情報を流せ。俺は、もう満腹だ。俺はオオコウモリの子達をもっと馴致させ信号を送る役目だな?」
「ああ・・T国もそうだが、オオコウモリを日本全域の探索に用いたい」
「ははは・・俺達を、とうとう全滅させようかと言う生体武器を逆に牛耳るってか・・けど、面白い、俺にどれだけの事が出来るのか分からないが・・今から馴致させるのは幼いオオコウモリだよな、勿論・・でも、同時に先に放っているオオコウモリも俺に従わせるようにし、群れのボスでも見つけ出し、殺すのか?」
「全部は言わないよ、任せる」
「相当、体力も知能も高いボスが居るようだから、慎重にいかないとな・・でも、成功したら、今のオオコウモリ達の勢力図は、ごろっと変わる」
リンはそこまで聞くと、一人で深夜ここから離れて行った。シンはこの監視小屋で休む事にした。用事があれば、シンが居ると言うマーキングを施しているので、誰かが訪ねて来るだろう。
そんな密使命をシンは個々に与えるのだった。そして、一番シンとも長く付き合って来たランを、その監視小屋に呼んだ。シンが尤も自分の能力を駆使し、事実上第3世代のトップとして動き出した瞬間なのだった。誰も、このシンの密使命に気付く者は居なかった。その前に殆どの野外活動を行う人員が、シンの見事な采配によって、作業を分担し従事させられていたからだ。そして、それがシンに動かされているとも感じていない。それぞれのやる気を起こさせて、自主的に働いていると言う実感があるからだ。ドームの中と発電所ではエライリーダーやコウタ班長が芯になって動いていたからだ。
「ラン・・色々プログラムやら、発電所の手伝いやら、雑務に追われたよな、最近は」
「まあな、でも充実感はあるよ、どんどん俺達が前に進んでいるなって感じがしているからさ」
確かにランの才能は、コウタ班長を手伝ったり、キャタピラ駆動車の開発にしても、如何なく発揮されている。シンはここでも思いもせぬ事をランに告げるのだった。
「どうだ・・射撃の腕も上がったか?」
「射撃ってよ‥俺は色々やる事が一杯あってさ・・」
「ふ・・良いんだよ、お前が鉄玉を大量に作った時、今では本物の銃弾も使えるが、それを回して貰って、訓練をして来たんだろう?カンジやショウに最初手ほどきを受けたけど、一番の射撃に関しては第一人者になっている、知らない俺だと思うかよ、ラン」
「ち・・お前はいつもそうだ。どこかで、全員の動きを知ってやがる。確かにこそこそとやる奴や、今は、野外活動と言ってもドーム外で動ける喜びに浸っているからさ、おかしな考えをする奴も居ないとは思うけど、それでも俺達が過ごした組織のような管理社会には戻りたくないと言うのが本音だ。そう言う意味では、お前は俺達を監視してやがる・・って、そんな気がしないでも無い」
「おっと・・それは俺に対する警告か?或いは文句かよ、ラン」
シンの顔色が変わった。




