第三章そのニへ 新たな局面へ
「ずばり・・オオコウモリの分速は160キロ、この第一ドームは九州の北端付近に位置すると言うのは分かっている。そこからT国は、どの付近に行くかだけど、5時間もあれば到達する。オオコウモリの連続飛翔時間もその程度なら可能だろう」
「何・・オオコウモリがT国に飛んで行っていると言うのか?」
「ああ・・乾季、雨季にどこまで飛んで行くのかを知る為に、俺は子のコウモリを飼育し、人間に馴致させ放した。皆はどこまで先を見ているんだと言うけど、そんな深く考えちゃいない。原点はそこだし、ソナーとマイクロカメラも肉体に装填している。3年は電池も持続するし、また切れれば戻らせて入れ替えれば良いし、次の子も放せば良い。その内にかなりの数が人間を怖がらないオオコウモリになるし、襲っても来ない個体が増える」
「おい、だったら、そんなすぐ先じゃねえじゃんかよ、お前はずっと先まで見越しているじゃんか」
「まあ・・そこまでさ。その中で、飛行経路が判明した。殆どは日本国内で、沖縄とか、東北までの間を行き来しているようだ」
「分かったのか・・そこまで」
「ああ・・そして一部が大陸まで飛んで行っているんだよ、これが」
「ほう・・誰か知っている者は?」
「今は誰にも言っていない、ただコウタ班長にはT国が健在かもって情報は渡した。目的がそこにある」
「そうか・・重要な話になったな・・これは」
「ただし・・確定的な情報は何も無い。だけど、確かめる方法は模索している。逆に探索される可能性もあるからな」
「だとしたらな・・それに生体カラスが飛来した事実があるのなら、T国が健在な証になる。そこに疑いは無いだろうし」
「だな・・確かにそうなんだ。ただ、俺達は第1世代が冬眠と言う手法を取った事を知っているし、事実その事も伝えられている。その為に、生体武器カラスも冬眠と言う手段が取られていたらどうする?」
「馬鹿な・・数10人規模の冬眠と数百羽、数千羽規模のカラスでは規模が違うし、そんな大掛かりな事が・」
「でも、第2世代の黑服が言っていたが、あのT国だからな・・実際何をやるのか分からないぜ?世界の覇権を狙っていた国なんだからさ」
「そこまで言うからには、シン・・お前に何等かの根拠があるって事だろう?違うか?」
シンはにやりとしながら、
「おろ・・かなりシャープな突っ込みだな、リン」
「俺に似合わずってか・・お前と結構付き合って来たからさ、そう言う何時も謎かけ見たいな問答をする奴なんだ。そこから相手の考えや、自分の考えている事を擦り合わす。押し付けや、否定は絶対しない。けど、お前には何等かの確証がある。オオコウモリの子にカメラと搭載したのなら、もうT国や海外の国にオオコウモリが飛来したと言った。そこで何等かの建物や、生体武器であるカラスを撮影した?」
リンが真っ直ぐにシンを見つめる。




