第三章そのニへ 新たな局面へ
その返事に、またとんでも無い事を思い浮かべていたなとシンが苦笑するが、危うさに少しブレーキと注意喚起をした事で、ケンは十分に働いてくれるだろうと思った。
シンは、その後立て続けにリンを呼んだ。
リンは、非常に便利な男であちこちからお呼びが掛かり、動きも早い事から重宝されていた。しかし、本来栽培の件に関しては既に彼の手は離れているし、このような作業で費やさせるべき者では無い。もっともっと働いて欲しい事があったのだった。だが、シンとリンは、互いに合図があって、日頃から誰よりもコミュニケーションが取れていた。
「忙しそうだな」
今度は、シンがリンに言った言葉だ。
「ああ・・あちこちからお呼びが掛かってな、忙しいと言うか、大変と言うか」
「ふふ・・本来、リンは肥料の事とかも専門家だけど、行動も早いし遠目と言っても今やかなり便利な望遠鏡もあるし、そっち方面では無く、耳の方で働いて欲しいんだがな」
「耳だって?」
「そうだ・・リンは例の超音波の音域をかなりの部分で聞き分け出来る超能力者だ」
「おいおい・・そんな超なんてつけるんじゃねえよ‥俺が特別な人間だって言われるじゃんかよ」
「ふ・・そう言う評価が聞こえて来ているぜ?リン」
シンは笑った。確かに今のリンの動きや、常人離れしたものは、そう言われても不思議な事は無い。
「よせやい・・で?俺も忙しい、どんな用事だ?」
「他の用事なら断ってくれ‥重要な用なんだよ」
「どんな・・?」
リンが少し眼を輝かせた。つまり、殆ど雑用に近い便利屋にリンは飽きていたのだ。
「今・・俺達は重要な局面に入っている。ここまで俺達は暗中模索の中で、本当に一寸先も見えない状況で、組織にも不信感を持ち、絶対王者のオオコウモリとも戦って来たし、ここへ来て*T国の健在情報もかなりの信憑性を高めて来た」
「何!T国が?」
「リンにははっきりとは言っていなかったよな。でも生体武器カラスがこの国に飛来した点で、既にT国には電磁パルス爆裂後も活動があったと思わないか?勿論100年前の話だ。遺伝子破壊により、飛来しても死に絶えた可能性もある。しかし、日本はオオコウモリを放したんだ。そのオオコウモリが今も健在なんだ。生き残った可能性も否定は出来ない。オオコウモリが悉く生体武器カラスを殺ったと思うか?」
「全部は・・幾ら飛翔スピードが上とは言え、カラスは地表にも降りるからな」
「そう!そこだ。カラスは非常に知能も高い。その身体能力が劣っているとは言え、むざむざやられるかな・・と思ってさ」
「でもさ・・今持ってカラスなんて目撃もした事が無い。居ないと思うのが、俺達の観察結果だ。それを持って逃げ帰った、或いはオオコウモリに殺られた・・と考えるしか無い」
「T国がその時、カラスにカメラとか、ソナーを取り付けているとしたら?」
「ソナーは電磁パルス爆裂から半減期、電子信号は使えないと聞いている」
「そうだな・・でも、カメラならどうだ?シャッターを押せる旧式の物なら十分使えるし、今現在なら、ソナーも可能だ。発電所が機能すれば、レーダーも使える」
「おい・・何を考えている?シン」
*確かな事ではない 現時点の情報をつなぎ合わせたらこうなると言う事だ




