第三章そのニへ 新たな局面へ
ケンがずっこけそうになった。ダンも幾分変わって来たなとシンも眼を細めるのだった。確かにまだ暗闇の中で、灯りを見つけようとする行為は当然の事だ。安全第一、でも、その中に目標や計画が練り込まれる。ダンは、理想の中で現実逃避をしたような先の目標を口にする事が多かった。しかし、シンと話をしてから、まず現実をしっかり把握し、今出来る事、今分かっている事を中心に自分達がどう言うスタンスを持つべきかに思考を変えて来たようだ。その会話の中で、そんなどこの国が、どうなっているとか、また他の七つのドームがどうなっているのかを考える必要が今は無かった。相変わらず、オオコウモリが空を飛ぶ、シンの策がどうこの危ない生体武器に影響を与えるかも知れないものの、少し状況も変わりつつあるし、この無尽蔵に供給される水・塩による発電機・そして触媒は製造出来る目途がついたと言う。鉱物分類機と言うものも開発されていて、周囲からも電磁パルス爆裂によって粉末状になった泥や砂から重金属や、希少金属などを取り出せると言うのだ。原理さえ分かれば、AIによるマイクロ作業を捨ててでも、大型化しても良い、同じ原理で発電機は作れる。電力に余裕が出来てくれば、生産も今後増やせると言うものだった。
「でも、発電機・蓄電池の提案はでかかったよなあ・流石にシンだ」
ダンが言うと、シンは、
「いや・・確かな根拠などは無いんだよ。だって、俺がそんな機能を全部知っている訳じゃない。けど、皆が優秀だから、ふと思いついた事も具現化しちまう。俺こそ驚きの連続だよ、それに本格的に発電設備も出来そうだ・・考えて見たら、熱でタービンを回す電力量は、当然の事この発電に比べても巨大だし、地熱は十分にあると見ている。いっそ、噴爆って言うんだよな、このエネルギーを一気にパイプを回して、それも利用しようって案も出ているらしいよ」
「シンが掘った・・塔周辺の穴かい?でも、あれば噴爆を拡散させるための穴だったのでは?」
「色々検討したが、塔下部の装置は相当危ないものらしい・・電磁パルス爆裂後25年と言う冬眠の想定とは、恐らく世界がそうなった時に、*成層圏より更に上に打ち上げる巨大な衛星かも知れないってコウタ班長が、内部の資料の一部をやっと見つけたって言っていた」
「何だって・・そんなものが地下に隠されていた?」
「ああ・・でもさ、それこそエネルギー発電だけど、一度きりの噴爆で終わるかも知れないって言う事だ。即ち、過去にこの塔の機能は稼働していないと言う事だ。俺達が何も分からず、その噴爆のエネルギーを拡散しようとしたのは、正解だったかも知れないんだ。だって、もう電磁パルス爆裂は、地表の全てを破壊し、終了した。その世界に誤算であったが、塔のこれ・・*例えば巨大な量子発電所なんだよ。量子を爆発させて発電を行う・・と言うような・・が、それも想像に過ぎない話だ。でも、本当に危なかったとは言えるよな?それこそ、この周辺は核爆弾を投下されたように、今度こそ、一瞬でこの世界は消える」
「えええっつ!」
*ずっと後にこの事も明らかになって来る *例えばの話である これには真実性は薄い
その言葉に、眼を丸くする全員だった。




