第三章 その一決意
「なかなか面構えと言い、今まで見た他の野犬とは思えぬしっかりした顔だ。これは昔警察犬などで活躍したと言うシェパードって言う犬種の血が入っているんだろうな。俺達がここへ足を踏み入れる前から待っていたようだ。おい、リン、お前より耳が良いかもな」
「ぷ・・当たり前だろ!張り合うつもりはねえよ、犬とは」
「あはははは」
リンが噴き出すと、全員が笑った。カイには殆どこれで3回目の顔合わせになるが、人間達に対する警戒を解いているようだった。少なからず、ケンとは信頼関係が少しではあるが出来ているように思える。リンがカイの前にオオコウモリの燻製肉を少しちぎって放って見た。しかし、ぷいと横を向き、カイはそれを口にしない。
「おろ?俺がやったんじゃ食わねえのか・・ケン、お前がやって見ろ、鹿の干し肉もあっただろ?」
「何を試しているんだよ、リン・・分かった、おい、カイ食え」
ケンがカイの前に今度は鹿の干し肉を放ると、ぱくぱくと尾を振り食うのだった。
「はは・・もう完全にケンの相棒だ。それにとても従順だ。このカイは、凄く良い相棒だな、ケン」
「ふ・・」
シンに言われて、まんざらでも無さそうなケンだった。ダンがその時、
「石板・・かなり字が鮮明になって来た。これは掘ってあるようだな、文字を」
熱心に大理石の板を見ていたダンが、声を上げた。
「読めるか?ダン」
「ああ・・少しだけ・・やっぱりシンが言ったように、ここは温泉施設だったようだ。この湯の効能などを書いていたようだな・・持ち帰る程の物じゃないよ、恐らく」
「そうか・・残念だな‥少しは象の事も分かるかと思ったんだが」
「象が、ドームで飼育されていたか、或いは他で飼育されていたかの疑問だよな?それは」
ダンが聞く。




