第三章 その一決意
ケンが呟くと、
「まあ、そう言う何かを遮る条件下にあったと言う事だろう。人工物や鉄骨、コンクリート等の残骸は無い。が、その時代に俺達がカリキュラムで習っていたような素材があったかどうかも分からない。国土改良計画があって相当に全国各地で生活基盤そのものが変化したとは聞いた。それ以上は教わっては居ないがな」
「ずっと、そうなんだよ。肝心な事はどこかで秘匿されているか、パタッと情報が切れているんだ。意図的なのか、或いはAI主導の世界では必要も無い事なのかは知れないがな」
そんな嘆息をするケンに、シンは答えず黙々と作業をしている。
「泥に埋まった分と、ここには温泉があったから、その底に沈んでいたか、或いは、扉が倒れたかどっちがだろうから、それで原型が残ったんだと思う。こう言う構造物は、恐らく日本中のどこかに存在していてもおかしくは無いよな。ただし、ドームや塔のように特殊構造物じゃないから、なかなか残っていないけど。殆ど鉱物組成としては存在するが、鉄なんかも野外のものは殆ど粉状だ。ただ、鉱山の中は大丈夫だった。確かに条件があるんだよな、何かの」
シンが呟いている。
「良し・・ここへもっと人を呼んで、この板を持ち帰ろう。俺達だけでは持ち帰れない。何か、この板にあるような気がしてならない。俺達の居る場所が正確に分かるものかも知れないしな」
ケンの言う事は尤もだ。2人はやっと3日ぶりに第2ドームまで戻って来て、ダンとリンに声を掛けた。ランは、もうすぐキャタピラの作業車が完成すると言う報告をダンに入れていた。それからでも遅くないんじゃないかと、今度は4人でその場所まで行く事にした。彼らもまた象の道が気になっていたのだと正直にこの時話すのだった。途中でカイが現れた。ケンが呼ぶと、今回はすっと走り寄って来た。
「お!カイはすっかりケンの相棒だな・聞いていたが、かなりしっかりした犬だ。おい、ケン・・何でカイと言う名前にしたか、俺は一発で分かった。耳がしっかりぴんと立ってやがる、お前日本の戦国時代のDVDを結構見ていたそうだよな、甲斐の国の武田信玄・つまり甲斐からか?」
「ふふ・・そうだったのか・・俺は名付ける時に居たけど、そこまでは分からなかったよ」
シンが笑う。ダンも微笑ましそうに見ている。




