第三章 その一決意
こうして、情報もどんどん出て来始めた。そして、シンには本当に必要で正確な情報のみが耳に入るようになる。他の4人のメンバーが、敢えて互いに声を掛け合い、シンの補助的な役目を担おうとしていたからだ。
そして、朗報が入った。ほぼ発電設備が整ったと言う事だ。余りにも早いその報告はシン達を歓喜させた。組織の上の連中も稼働前に視察に来るらしい事と、シンがかなりのメンバーを指導し、間欠泉の吹き出し口を地下30M付近に発見、その熱量を換算すると、とてつもないものであるらしいと言う事が分かり、急遽、地上に抜け穴を複数開けると工事を行っていた。これはかなりの重機が必要だったが、既存の物が回された。確かに地下坑道をずっと掘っていて、それをシン達には知らされる事も無くここまで来ていたが、オープンになったのである。勿論シンの働きかけがあったからではあるが、判明したのは、ほぼ塔近くまで伸びている事も分かったのだった。ほぼ、実働班が形成されない中でも、地下坑道掘削工事のミッションは、その目的を到達させる寸前まで来ていたのであった。それには、正直悔しい気持ちと何だかなと言う怒りの気持ちが起こったものの、1策では駄目だ、2策、3策を仕掛けると言う方針があった事も、神野黒服の助言を受けたからである。
そして、その危うきが、間欠泉に近い事も発覚した事で、坑道掘削工事は中止となり、重機がシンに与えられたのだ。こう言う場合のランは非常に頼もしい。すぐ難なく重機を操り、地下坑道を迂回させ、他の重機で時間を掛けても、塔に到達させるように図面を渡すと、自分が、地上までの穴を、鍾乳洞を利用し掘り出したのであった。
「全く・・自在に操るな、ランは・・手足のように重機を扱ってやがる。今までの掘削班って何だったんだよって感じだよな」
リンがため息混じりに言う。
「ケンも手伝っている。ケンは迂回掘削坑道工事だけどさ、こちらも負けちゃいない。すぐ重機を当たり前のように扱っているのさ。でも、ほぼ塔の30M付近まで掘削出来ていたなんて、驚きだよ」
「ああ・・俺達のミッションも大事だったけど、やはり一番安全なのは地下坑道だよな、それには納得も出来るさ」
「でも・・聞いて良かった‥危なかったぜ・・間欠泉は思ったよりかなりでかい。塔の直下でこれをどう発電に結び付けるのかは分からないが、ご先祖様もど偉い事を考えていたもんだよ」
「あれじゃないか・・AI任せと言うのなら、熱量のコントロールをかなり綿密なる計算とデータに基づいて切開されていたと言う事だろう?」
「だ・・な。とても人間などの太刀打ちできない強大なパワーを使う訳だ」
「蓄電池にも応用すると言う事だから、塔の内部にはそれ相応の機械類が埋設されていると言う事だろうな」
リンがかなりの話を突っ込んで来た。
「そうだな・・全てを見る訳にはいかないが、構造図をつい最近手に入れた。見るか?リン」
「あ・・おう・・」
シンがそこまで把握しているのかと少し驚きながら、その上に簡易的な発電設備にはなるものの初めて100年後の世界で、こう言うユニットを製造する訳である。相当な知恵と技術が集結され、AIに頼らぬ人力での設置は大きな意味がある。シンは、その事をリンに言いながらもその巨大さを力説していた。
「うお・・こんなに巨大な設備だったのか・・でもさ、科学全盛の時代に何でこんな・・」
「恐らく、化石燃料や原子力発電と言った発電システムに代わる、地熱発電に力を入れていたんだろうなと思う。それに、巨大な発電所になった理由は、蓄電池がほぼ90パーセントを占めるんだよ。つまり、超巨大な乾電池さ。メインでは無くて、緊急用とか、補助的度合いの発電設備&蓄電池らしいんだ」
「へえ・・そうだったのか」
「だからさ、塔の直下には、巨大な噴出抗が開いていて、このエネルギーは、とても強大だ。それを分散して、一気にタービンを回して電力を作っちまう。通常ならば電力と言うのは常に流れているものだから、発電しなくなると消滅するが、ここでは、それをずっと回転させながら、蓄電している施設らしいや」
シンもそんなに深く分かっている訳では無い。彼の飲み込みの範疇で説明しているだけだし、この全容を知る者は恐らく居ないと思われる。いずれにしても前時代と呼ぶが高度科学時代に創られたものだと言う事だ。
「今回の発電設備は、恐らくその蓄電池に溜められた電気を、かなりの部分使用すると言う目的と、地熱は、間欠泉程のエネルギーは無いものの、常時それは使用可能な程度の量を蓄電に回すらしいんだよ」
「で・・?どこまで蓄電池の容量があるんだい?」
「これも聞きかじりで、俺も殆ど知識も無いが、約3年分の電力は賄える程だと聞いた」
「それは・・すごいんだろうな、恐らく」
「ああ・・第1ドームと第2ドームをフル稼働して賄えるらしい容量だから、凄いそうだ。良くぞ、100年以上も溜めて置けたよな」
シンが言うと、
「待った・・蓄電池って100年も大丈夫だったのか?全くその間使わずに?」
「うん・・途中で恐らくメインケーブルがあって、間欠泉が爆発的噴出した時のパワーでフル充電出来ていたそうだ。それだと10年以上は大丈夫だそうだ。そこから、やはり少しずつ放電があって・・現容量がそれだけしか残っていないんだそうだ」
「じゃあ・・間欠泉って言うのはこの100年も噴出が無かったと言う事か?」
「俺が調べた感じでは、小規模噴出は常にあって一日に2回程あるが、恐らくその程度の噴出だと、地下の鍾乳洞に吸い込まれるようだ。だから、今まで随分勿体ない事をしていたんだよねって、コウタ班長も言っていた。それを今回利用して行くんだそうだ」
「そうか・・大体は分かった。でも、100年前にその大噴出があったんだな?それは確かなんだな?」
「データが出て来た。*ほぼ100年から120年間に一度、大噴出があって、それはこの俺達の地区と言うかエリアが観光地になっていたようなんだ。かなりそう言う記録と言うのは、AIの得意分野だからね。端末に保存されている」
「そうかあ・・成程。じゃあ、竪穴や、横穴数本を開けると言うのも熱エネルギーを分散させる為なんだな?いつそれが起きても良いように」
「ああ・・だけど、本来は直接フル充電と言う設備なんだけど、今は、そのAIコントロールに頼れないからね、人の知恵と工夫と、また分析も必要だが、相当数の者がこの発電設備の事で動いている。中心はコウタ班長だけど、メイ・リー博士の力も大きい」
「もう一つだけ聞くが、地下坑道掘削が、ほぼ近くまで進んでいたが、影響は?」
「一応迂回のルートを掘削中だ。結構温泉水が出て、大変らしいよ」
「良いじゃないか・・温泉と言うのは、使えるじゃんか」
「はは・・蒸気タービンに勿論使うし、湯温も90度以上あるらしいからね。本当に掘り抜いていたら、大事だったと思うよ」
*非常に重要な事 ずっと後に分かる また彼らはこ言う会話を無数に繰り返すが、確定的なものはこの時点では何もないのである
シンが言うと、リンも頷き嘆息した。




