第三章 その一決意
「はは・・検索機能や、色んな事を確かにあの部屋でやっていた。でもさ、こんな3D画像的なものは、ランの影響も勿論あるんだろうが、確か兼真室長ってかなり俺より、年も上だけどさ。かなりの画像加工のプロフェッショナルだと聞いている。平和な世の中なら、恐らくクリエーターと呼ばれる部類の人間さ。だから、こんな動きまでプラスして肉付けしてくれたんだろうな?シン、お前は何をやろうとしていた?それをまず聞こうか」
「ああ・・実働の経験が生かさせればと思って、主にシンツールを主体に、周辺の景色や、森林の様子、そこから見上げた風景など、それを可視化したいなと思ってやって来た事だ。それに可能な範囲で、山切りの木にはナイフで印をつけていた。それが俺の帰還できた一番大きな理由でもあるんだけどさ」
「成程・・これがもっと早く企画情報室から出ていれば、回りくどい実働をしながら、手探りで俺達は苦労もしなかったんだがな・・でも、殆どはシンツールに生かされていたから、役立った。で・・?勿論、それだけでは無いよな、検索機能をどう生かしたかは、この分析表が有効になる。シン・・これは、至急管理プログラムとして肉付けし、やるべきだと思う。兼真室長が適任なら、お前が任せろよ。俺はもう手を加える必要が無い程完成度も高い。これらを今聞いているが、お前が何故オオコウモリの子を捕獲したのかは、分かった。飼い慣らして、これに発信装置と監視カメラを装着するつもりなんだろう?」
「えっ!言っていないぞ、そんな事を俺は・・」
「良いんだよ・・言わなくなって、コウタ班長も俺も、第14班全員がもう分かっている。こうすれば、よりオオコウモリの生態も分かるし、行動範囲も分かる。お前は、先々を考えていて次々うと手を打っているんだよな。これを今のプログラムに有効かどうかをお前は聞いた・・そうだな?シン」
「あ・・ああ・・全部見抜かれちまったか・・ふふ・・はははは」
シンが笑う。
「でも、本当にシンが思う事、俺達も見習わなきゃなって思うんだ。第2ドームの件にしても塔の発電設備にしても、お前が適材適所に人員を配置し、準備をした。塔の発見、第2ドームの発見だって、遡れば全部そうなんだよ。遺伝子の事も、コウタ班長からかなり詳しい事を聞いたが、多分・・今の流れだったら、お前が兼真室長にかなりの部分を聞いているんだよな?」
「ダン・・お前は千里眼かよ」
シンが眼を剥いた。
「はは・・俺だって特殊班のメンバーだ。それに、第1ドームとかなりの部分でケーブルが繋がった事で、分かって来たものも多い。お前は、いちいちそれを聞く必要は無いよ、恐らくお前の所に誰から相談に来るし、情報を与えてくれるだろうしな」
「今は・・そうなっているね・・確かに」
「例えば、シンは嫌なんだろうけど、俺達野戦部隊の将とは、泰然自若とし、堂々とふるまっていれば良い。シンをずっと見て来たが、ずっと自分がやらなきゃならない使命感みたいなものが感じて、張り詰めているようだった。もう少し客観的に見ても肩の力を抜いた方が良いのかなと思っていた。恐らくシンはどんな事でもそつなく出来ちゃう奴なんだと思うんだ。でもさ、今は大勢の実働班メンバーが居る。それに、実働班以外にこうして野外で活動しているメンバーも多い。その中で皆色んな事を吸収してやっているんだよ。でも、俺に相談してくれて有難うな、シン、嬉しかったよ」
「ダン・・」
シンは友情を感じて、ダンの手を握った。ここまでの期間に既にシンはこれだけの人間関係を築いて来たのである。




