第三章 その一決意
「ああ・・少しエキスパートの君に試して貰いたい事があってさ」
「うん・・誰とは言わないが、俺が見よう見まねをして、企画情報室に居た頃、こうしたいな、こうだったら良いなと思う事がダンにとれば、何だ、そんな簡単なものかって言うよ思うけどさ、一つ一つPCに打ち込んで・・あ・・俺は誰が企画情報室の中で、一番の能力者なのかと観察していて、失われたと言ったら良いのかな、中央管理システムが機能していた頃なら、AIがそんな作業をあっと言う間にやっているんだろうけど」
「おい・・まどろっこしいぞ、シン」
ダンが眉をひそめた。あ・・兼真室長の話し方がうつってしまったとシンが苦笑い。
「あ‥済まん。その情報コマンド?新井田主任が一番だと毎日指先を見ていて、覚えた。それを幾つか組み合わせて、俺なりに作った表があって、知っての通り若山室長に企画提案書を提出したが、間違いが多く、全てボツにされた。それがこれなんだ。見てくれないか?いや・・そのままでは無い。ある者が修正してくれたんだよね」
「ほう・・シンが自分で覚えたコマンドプロンプトだって?でもさ、企画情報室のコマンドプロンプトって、殆どは検索機能のものだった筈だぞ?」
いぶかしながら、今更、第2ドームのセキュリティの壁を突破し、幾つものソフトを開発している超高級技能者であるダンにとっては、そんな今更のものだった。どれどれと眺めた瞬間、ダンの顔色が変わった。
「シン・・お前これ・・」
「あ・・駄目かな・・やっぱりさ」
「誰も駄目だなんて一言も言っていない・・お前、自分のスキルを3Ⅾ化しようとしていたのか」
「そんな事聞かれても分かる筈も無い。ただ、自分でやる事も無いから、コマンドを打ち込んでは、組み合わせて、つぎはぎで作ったもんだしな」
「聞くが‥本当に何も習っていないんだな?」
「あ・・でも、ランと一緒に良く居たからさ。あいつがゲームとか、機械いじりが好きだったから、そのやり方は見て来たつもりだ」
「そうか・・なる程・・そのゲームの3Ⅾと企画情報室の検索機能を立体化し、且つ、情報集積したものを分析出来るようにしたんだな・・これは」
「何となくさ・・それで外の風景や、色んなものが可視化出来ないかと思ってさ」
ダンが、そのコマンドプロンプトを持って来たPCに入れると、ここからが兼真室長の本来の才能が足りない部分を付け加えて作ったであろう。3Dの仮想人物が、その画面に現れた。
「うお・・こんなもの創った覚えはねえぞ」
「おい!お前自分で創ったって言ったじゃんかよ」
ダンが突っ込んだ。
「いや・・こんな人物画像なんて・・」
「はは・・分かった、これは企画情報室に若山室長の後任で入った、兼真室長が、お前のコマンドプロンプトに手を加えたな・・」
「あら・・ばれちゃった」
ダンがシンに苦笑い。




