第二章その六 そして再始動に
「何だって?この台風が、ほぼ接近して来て相当風雨のある中で、子のオオコウモリを捕獲しろだと?正気か!シン」
「ああ・・本気だ。一網打尽とはいかないまでも親子を捕獲出来ればベストだ。やれるか?生物班のお前しか、こんな芸当は出来ないだろう」
「おい・・シン、お前も無茶苦茶を言い出したな・・」
ダンが絶句する。しかし、シンは
「どうだ?出来るか?非常に大事な事のように思えるんだ。こう言う状況だからこそ、警戒心も緩んでいて、子を捕獲できるチャンスは殆ど無いからな」
「一つ・・聞くが、子だけでも構わないんだな?最悪のケース」
「親が居ればベストだが、多分、自分の翼に子をくるんでいるだろうから、一緒に捕らえられる確率は高いと思うんだ」
「成程・・シンの状況判断は、シンツールもそうだけど、具体的だな・・分かった。方法は任せて貰えるな?傷はつけないと言う前提でだが、勿論の事」
「ああ・・任せる。誰か連れて行く必要があるな、誰にする?」
「カンジに頼んで貰えないか?それと、もう一人‥ランに」
「ラン・・?ふふふ・・分かった」
この企画で殲滅しようと言ったランを捕獲に駆り出すとは・・シンは苦笑した。ダンの脳裏に妙案が浮かんだのだろう。しかし、風雨は相当強くなっていた。
ランが勇んで合流したのは言うまでも無く、これは本当に見事な連携と作戦だった。まず、カンジがカーバイドをさく裂させて、注意をオオコウモリがその音の方向に向けた途端に、ランが、用意していた投網をオオコウモリにばっさりと被せたのだ。オオコウモリは完全に逃げ場を失った。そして、ぐるぐるに縛られて、第1ドームに運ばれたのである。この間のダンとの連携も見事だった。通路を通り、用意されている籠に入れられて、オオコウモリは睡眠薬を注射されると、暴れる暇も無かった。他のオオコウモリには、ランやカンジを攻撃するゆとりも無く、岩山の奥に身を寄せ、風に飛ばされないように踏ん張っているのが精いっぱいであった。
そして、シンにすぐ報告が来た。
「はは・・お前らって奴は・・」
シンは、今更さらながら彼らの実力を認めざるを得なかった。
「ははっ・・こんなに作戦通り行くとは思わなかったぜ」
「シンが、予想していた通りの状況だったからさ、やっぱりその通りになっただけだ」
ダンは平然とした顔をしていた。
「シンの読みは本当に的確だよな、うん」
ランも頷くのであった。しかし、シンは
「2人、いや・・3人のタッグのお陰さ。ほんの小さな予想をしたまで」
シンは首を振るのだった。




