第二章その六 そして再始動に
シンは、全員の言う事は良く分かっていた、シリマツ官吏の事も、何となくだけど情報をかなり得て、また報告している事も感じていた。しかし、それ以上の情報を、もう神野黒服に貰っているし、権限も与えられているのだ。そして、シン達がかなりの権限を与えられた事もシリマツ官吏は、正確に知っている。だから、エライ首班を発電設備の担当とした事によって、彼は従順にその役目を果たすだろう。そして律儀で真っ直ぐなマコト副長も居るし、シンとは非常に信頼関係も出来上がっているのだ。何かあればきっと報告に来る筈だし、もし仮に反目する黒服だとしても、彼らに今の状態を壊す考えなど起きる筈が無かった。ここは一致団結して事に当たるべき時なのだから。
「俺は、岩山に集結すると見ているんだ」
ランが言う。
「確かに・・あそこはオーバーハングしていて、現実にオオコウモリも生息しているよ、でもさ、何万頭もの数があそこで集まれる筈が無い。それも見越しているのか?1000頭、2000頭を仮にやったって、本体は残るんだぜ?ラン」
リンが突っ込む
「それも考えたさ。でもさ、そのオオコウモリを殲滅出来たら、奴らの知能は高い、ここは危ない、危険だって思い、巣作りや繁殖は止めるんじゃないのか?それを考えた」
「成程・・一理はあるな」
ダンが肯定した。
「な!だろう?黙って見ている手は無いと思うんだ。台風の轟音や風がオオコウモリのコミュニケーションを出来なくし、確かに非人道的で無慈悲な行為だと思うさ、俺だって、抵抗しない奴を殺ると言うのはさ。でも、こいつらは、俺達に参ったと万歳している訳では無いんだ。嵐が明けりゃ、食糧を得る為に飛び回るだろうし、俺達の常時敵意を見せる。ここで人間には勝てないかも知れないって言う打撃が必要だと思うんだ。全頭を殲滅させると言う事では無い」
「シン・・お前はずっと黙っているよな、招集した目的はこうして全員の意見を聞く事だろう?何故黙っているんだ?」
ダンが聞く。
「うん・・決めかねていてさ。ランの提案も或る意味、正しい事なのかとも思う。ずっと俺達はこんな感じなんだ。本来は紫外線を浴びて、動物本来の野性味とか、体力とかそう言うものを取り戻すと言うのが、ここまで色々聞いて来て、人類の退化と言う意味合いだと思った。いつまでも建物の中で、本当に俺達はこの星の中で生きているのかな・・なんて疑問も沸いた。ランの言う人間の尊厳とか、力をもう一度復権しようと言う意気込み、凄く分かるんだよ。そして、核に続く、電磁パルス、はたまた戦争道具として生体武器まで開発しちまった。人間と言う生き物はどこまで行っても縄張り争いを繰り広げなきゃならないんだなと思うと、結局の所、命の取り合いなんだよね。だからそこで残酷とか残虐だって言う言葉は余りに、身勝手過ぎてそんなの余りに軽い話なんだよ、だって、115年前に数千万人、数億人規模の大量虐殺をやっちまった訳だろ?」
「む・・」
誰も何も言えなくなった。




