第二章その六 そして再始動に
「その・・今言って良いのかどうかだけど、確かにずっと一緒に実働班もやって来て、組織の階級的なものもやっと聞いた所だ。黒服にはランクがあって、1A、1B、2A、2B・・その下になると、3A、3Bは黒服じゃ無い・・シリマツ官吏は、ここだけの話だが、芳川1Bの配下だったと言うじゃないか。つまり、神野1Aとは反目とはいかないまでも、かなり距離を開けていた立場だった。俺はシリマツ官吏をずっと見て来たが、確かに説得力もあるし、エライ首班の忠実な部下だ。しかし、結構色んな情報を上に上げているんだよな、勿論黒服にだよ」
「おい・・それは、シリマツ官吏が芳川黒服のスパイだって言うんじゃないだろうな?」
少しランが血相を変えた。
「まあ・・とんがるなよ、ラン。人間だからさ、色んな派閥もあるさ。そして今神野黒服達トップ5が組織を仕切っている。これは、多分絶対的立場で居なきゃならないんだと思う。それでなきゃ、組織なんてまとまらないよ、でもさ、俺達だって今の立場を自覚しながら言うが、もし提唱して失敗だって有り得る事さ、そんな大胆な策で、もし、一網打尽にオオコウモリを駆除出来ると言う保証がどこにあるんだよ。その時何と言われて責められるかって言う事も覚悟しとくんだな」
「む・・・」
ランが黙った。確かに全員右へ倣えでは無い筈だ。反目とはいかぬまでも、今まで誰もやった事の無い事を実行するには、勇気が居る。そして決断するのに、安易な発想ではどうにもならないのだ。シンはそれで全員を招集したのである。全員が第1世代のトップ5の遺伝子を受け継いでいると言う確かな根拠で、今動いている訳だ。
「良いか?俺の意見だが、オオコウモリがそんな天変の時、じっと危険な場所に居るかな、どこへでも逃げられるじゃないかよ」
リンの言う事は尤もだ。シンもそう思う。しかし、ランは、
「確かに考えたさ。でも、何でオオコウモリが乾季と雨季に移動している?象の道もそうだがよ。動物達だって、移動している証左がかなり分かってきつつある。しかし、俺達はそこへすら探索に行けやしない。その為に、今発電施設を稼働させ、重機やその他を動かそうとしているんじゃ無いのか?これだけのミッションだったら、既に殆ど完結しているじゃんか。食料の件も何とかなりそうだ。発電設備が稼働すれば、産業資料館の設備を使い、生活基盤も楽になる。じゃあ、これで終わりか?ずっと俺達はオオコウモリの脅威に怯え、恐らく今ある設備の中で、どれだけ奴らに打撃を加えられるんだよ。圧倒的に人間の数が少ない中でよ」
ケンが言う。
「それは、その通りだよ。でも、順番と言うものがある。何故、今なんだ?台風だけの件なら、こっちだって警戒しなきゃならないだろうがよ。大水だって出る確率も高いんだぜ?」




