第二章その六 そして再始動に
「コウタ班長、とうとうここまで来たな」
「ああ・・でも、ここからが逆に大変だと思う。発電事業に従事した者など皆無だし、第1ドームのかろうじてAI端末を利用し、殆どは前時代と同じ事さ、結局は電気の力を生み出して、その力を借りてやるしかない訳だ。勿論、その為には、幾つもの管理を手動で監視しとかないと暴走される事もあるから、人員も必要となる。尤も・・第1ドームでカリキュラムを受けた新たなメンバーも加えてだけどね」
「大変だな・・振り分けがさ・・」
シンは言わんとする事を分かった上でそう言った。
「驚いた事に、人間の能力・・つまり把握・管理も殆どAI任せだったんだ。それぞれ個人の適性や、人間だからこそ持ち得る感情なども出て来る。その辺には、ある程度リーダーが必要なんだよ。そんな事から始めなきゃならないからね」
「そうだな・・コウタ班長が一番良くその辺の事が分かっている」
「いっそ・・エライ班長が、この仕切りをやってくれればな。人望的にも適性が一番あると思うんだ。重要な部門だと思うしね、それに俺とシン班長は、塔付近の間欠泉の坑道掘削がこれからメインになるだろう?発電が可能になったとして、そんな動力をあてにしていたのでは、実際高分子砲?そんな危なっかしい武器だか利器だか知らないけどさ、ぶっ放す訳にはいかないじゃないか。また、相当な地熱の発生があるのならば、もっと有効に使える方法を模索した方が良いと思うんだ」
「おいおい・・コウタ班長は今、2つも3つも非常に大胆な発言をしたぞ?」
「ふふっ・・何となくだけどさ、君が第1ドームに呼ばれて戻って来た時から雰囲気が随分変わった。恐らくだけど、神野黒服から相当な権利を委譲されたんじゃ無いかと思ってね」
「おい・・それもとんでも無い大変な発言だぞ・・コウタ班長」
「俺も、中枢に居た者だ。勿論1Aクラスと面談もした事は無かったが、黒服クラスとは指示も受けたし、動いて来た。だから、良いよ、シン班長。ある程度俺も知っているのさ。だって、AIに直接関連出来るメンバーは限られている。第1ドームのAIが中央管理システムのような巨大なものでは無いにしろ、これだけの第1ドームを管理しているんだ。だから知り得ても言ってはならない事は沢山あったよ。言えば、本当に処刑されちゃうからね」
「そうか・・分かった。君に言わせるような真似はしない。だが、これだけは言っておく、俺は確かに大変な事を披露された。だけど、実際、塔の事や、産業資料館の事、第1ドーム、第2ドームの事を知っている訳じゃない。今言うAIが少なくても、管理してなきゃ、これだけの組織だ。動かせる訳も無いと思っている。それも電磁パルス爆裂115年後の今日までね。その上で、俺は現場で直面している目先の事だけしか見ちゃいない。壮大なこれから先の何たるかを、指示出来る立場でも無いし、指揮を出来る人間じゃ無いと自覚している」
「分かった・・でも、今は君がリーダーだ・・そうなるべきだ。今言った事が間違いならば拒否してくれたら良いし、君しか動かせる者は居ないと思う」
「考えて見るよ・・、何がベストなのかをね。で・・今君が言った、人間であるが故の感情であるとか、少なくても階級社会で生きて来た者が、ある日突然に自分の部下が上に立って命令したら、どんな気持ちになるだろうか・・俺はその辺の事も考えて見たいんだ」
「なら・・俺に考えがある。そのまま神野黒服の命令だと言えば良い」
コウタ班長は、実に情勢を把握していた。天才だと言われて来ただけの戦略家であり、発明家であり、技術者でもあった。シンは、それからすぐにエライ班長に神野黒服の命だとシリマツ官吏を通じて塔の地下内部に既に配線も完了していた、発電システムの一部を稼働すべき工事を監督させるのだった。その点で言えば、エライ班長以上の適任者は居なかった。理系の豊富な知識と判断力は人望も含めてぴか一だったからである。
こうして、順調に発電施設は、設置されて行った、一方で、ランが、血相を変えて重大な危機では無いかと報告に来る。今第14班は個々に分かれて、各班の様子や、オオコウモリ、その他全般について監視的な役目を担っていた。かと言って、ランがシンにご注進に来た訳では無い。




