第二章その五 黒服に会う
「じゃあ・・第2世代が20年の冬眠に入る前・・その10年余の間にAIを稼働させていたのですね?」
「そうだ・・その通りだ。残念ながら、その唯一の天才プログラマーは没した。65歳になった時にね、我々もそして、150年ある寿命を縮めている。だから65歳前後で死ぬだろう」
「・・・まだ電磁パルス爆裂20年後以降、10年間は緩やかではあるがその影響が残っていたと言うのですね?」
「その通りだ。我々も、これは核の脅威を習ったと思うが、電磁パルスの本当の怖さを分かって居なかったんだ。30年を経てもなお、警戒すべきだったんだよ。第1世代はそこでも過ちを起こし、更に第2世代にも過ちを起こした」
「何と・・」
「しかし、我々には勿論そんな体の異変に気付く訳は無い。そして極秘にやるべき事をやるプログラムに従い、次々と実行した。即ち、君達も感じている事の一つ、父母を知らぬと言う事だ。第1世代から我々もそうだが第2世代、第3世代は殆ど試験管ベビーだ。自然分娩などを求めていたら、人口は更に減っていただろう。100年も経ずにね」
「聞いても良いですか?」
ケンがここで顔を上げた。
「勿論さ、私は何も隠さない」
「我々・・50名には、第1世代のDNAが入っていると言う事ですね?そして神野黒服の第2世代も同じくですか?」
神野黒服は少し微笑んだ。
「そうだ・・血は争えないと言うか、品種改良の話にも関連して、我々人類の行き着いた先は、優秀な血を残す品種改良だったんだよ、寿命、衰えて行く種としての脆弱さをカバー出来るものをね。近親婚姻も、もはや関係無い。君達が選ばれた50名と言うのは、そういう事だ。しかし、我々人間が実行したその作業では、ばらつきが当然のようにある。それが人間だと言われれば確かにそうだろう。まだ世界は次の科学への発展途上であり、まだまだ改革せねばならない状況だったのだよ、これは冷酷に聞こえるだろうが、君達及びドームの者達全員に、認識番号が生まれた時から埋め込まれている。どこに誰がどうしているかも全て分かるんだよ。しかし、我々はそれをしなかった。反対意見も多くあったが、私はさせないように動いて来た。内紛の一部にはそう言う事も含まれている」
「何となく‥分かって来ました。では、オオコウモリを放したのは、食性ピラミッドの頂点を創生する為では無かったのですね?」
シンが言う。
「大きな間違いだった。何故なら、20年後に飛来した生体カラスは、電磁パルス爆裂の半減の中で、数年で息絶えただろうと思う。また、食糧も得られない環境でどう生きるのか、そして大葉を食った・・それで充分だったのだよ。既に日本は、完全に生体カラスの防御法を確立していたからだ。だから、オオコウモリ等放してはいけなかったんだよ。だから膨大な数にまで繁殖してしまった。大きな脅威を更に作ってしまったのだ」
「そうだったのですか・・」
やっとそんな情報が聞ける事になった。しかし、何故今になってこんな事を言うのだろうかと思った。




