第二章その五 黒服に会う
「君達50名は特別な者達だと自覚して貰っても構わない。それでは、回りくどい言い方で君達の反応も確かめながら、理解力もやはり私はこの場で確かめているが、間違い無いようだから、我々の事を言うべき時が来たようだ。そして本当の目的や、目指す方向は、私達が伝承と言う形で伝えねばならない時がやって来た事を、告げたい」
少し神野黒服の顔が厳しくなった。緊張がシン達に走った。
「凍結から覚めた初代50名は、既に同世代が1人も存在していない事を確信していた。何故ならば、君達が思うような電磁パルス爆裂は、第1ドーム内でも影響があったからだ。そんな爆裂を防げるだけの防御手段は、実の所なかった。しかし、ある程度緩和出来るだけの装置が作動していた。そして、第2ドームが地下に3室ある事を想像して欲しい。そこに45000人の人員が、シェルターとして避難していたのだよ」
「え・・これ程第2ドームを探すのさえも苦労したと言うのに、既に?」
「電磁パルス爆裂以前の話だ。既にそう言う戦争が起きる事を予期されていたから、避難していたのだ。しかし、第1ドーム内では主要な設備が稼働している。その為に50名プラス作業員5000名は、そこを離れる訳にはいかなかった。それが本当の理由だ」
「では・・50名以外の人員は、例え犠牲になっても仕方が無いと?」
「想像を超えていたんだよ・・電磁パルス爆裂が、人命は救っても人の精神を破壊するものだとはね・・その者達は、殆ど外へ飛び出したんだよ。精神の異常をきたして・・本当に恐れるべきは、体を守る事では無くて、知能の高い人類の精神を守護せねばならない事だったのに、それを怠っていたのだ。第1世代では無い。それを創った政府にその責はあると思う。だから彼らを責めてはならないのだ。命令に従っただけなのだから」
「はい・・分かりました」
「経緯を説明した。そして、第1世代は20年後次の行動に移る。君達が遭遇した風景では無かった。荒涼として広がる砂漠の台地には、草木一本も生えて居なかった。彼らは、第2ドームに向かった。そうだ、50名全てが実働班となってね。だから電磁パルス爆裂後20年後には、既に我々は一歩を踏み出していたんだよ」
「済みません・・そこで質問をさせて下さい。では、第2ドームは電力も無い筈なのにそどうして45000名もの人達が生活できる環境があったのでしょうか?食料は確保出来ていたとしても」
シンが論点の少し不可解な部分をついた。頷きながら神野黒服は、
「そうだね、シン君の指摘はご尤もだ。第1ドームより地下坑道がある話は知っていただろう。そして非公開であり、絶対極秘事項でもあった」
「はい・・」
「その地下通路を通って、第2ドームから第1ドームに45000名は移動した。しかし、その後、意図的に第2ドームと第1ドームの地下坑道は閉鎖された。閉鎖したと言った方が正確だ。発破によって通行不可になったのだ」
「何故と聞いたら駄目でしょうか」
リンが今度は聞いた。




