第二章その四 個性
「おい、シン・・また何か考えているのかよ?」
「あ・・済まん。湖を良く観察したい」
「大蛇が以前出て来た位だからな、他にも居ないとは限らんぞ・・何しろ水辺には、動物も集まるし」
「そうだね・・」
否定はしなかった。今言った動物達が集まっているのは確かであった。そして雨季であるこの季節、水量も増しているだろう。この湖が人口湖では無い事は、どうやら確かだった。またこの地が九州だとするならば、火山も多く、カルデラ湖の可能性も高い。
シン達は観察する。水辺に動物達は割と居た。しかし、今まで確認出来た動物達だけだった。昆虫なども少なからず居る。ドームの中で飼育されていたとは思えぬものの、野菜栽培工場などもあるし、蜂は重要な昆虫だ。ある程度の種別はドームの中に居た可能性が高かった。その昆虫たちは、我が世の春だ。捕食される動物達も少ないから爆発的に増えた可能性が高い。それも、やはり限られた種類であった。蝶、バッタ類、カマキリ等々、当然蚊は居た。しかし、その昔南方から進出して来たような蚊は居なかった。殆どが藪蚊であり、家蚊などは少ない。水棲動物はどうだ?やはり極端に少なかった。タニシや貝類も殆ど居なく、個体数は稀に見える程度であった。
「この辺の貝なんかは、地下から流れて来たもののように見えるよなあ」
「地下って?」
「この辺には、地下洞窟も多い。だから、地下に電磁パルスが及ばなかったとして、地下に居た僅かの貝類が繁殖したんだろうけど、もともと地上で居た貝類とは種別も違うと思うんだ。また、貝とか魚類は、鳥が卵を足や、羽につけて移動し、そこで繁殖する事も多い。その鳥が余り居ないんだよね。限られた種だけだ、居るのは」
「じゃあ、今のこの近辺で生き残っていた僅かの種が繁殖している?」
「電磁パルスを逃れた種は自然繁殖しただろうし、ドームから出された種からの繁殖もあるだろう」
「じゃあ、地中に産み付けられた卵なんかも絶滅したのかな」
「そうだろうな。頑丈なコンクリート或いは新素材も、悉く破壊されるような電磁パルスだった事を思えば、やられたんだと思うよ、それに脆い岩体などはボロボロにやられているようだ」
思うとしか言えない。論理的に科学的に証明されたものでは無いからだ。
「そう思えばさ、生物の繁殖力って言うのはすげえよな。100年で、これだけ子孫を増やすんだからさ」
「どこかに、種が居たら、昔のように・・いや、人間が居ない分、野生の動物達が大自然の中で生き延びていけるのにさ」
「居ないって‥居るじゃん、ここに」
リンが言う。
「あはは・・その人間が絶滅寸前なんだろうがよ・・これだけしか全世界で居なかったら、どの道間違いなく数10年で自然消滅するぞ、リン」
「あ・・そうか・・だよな」
「その事も、俺達が編成された時に言われていた事だ。当然、その危機感はあるさ。よし、もう分かった。どこかに奇跡的に生き延びて来た動物や昆虫、水生生物が居たとして、俺達は、これ以上破壊しちゃいけないんだ。共存共栄を目指さなきゃな、そこで、互いに生存できる未来を構築しなきゃならないんだと思う」
「遠大だな・・でも、言っている事は分かるよ、何となくな」




