仲間集結
その問題提起者は緊張した。漏らせば抹殺だってされるだろう。そうやって組織が守られて来たからだ。絶対服従・・この組織内で裏切り者が出る事は、壊滅を意味する。しかし、組織を飛び出して生き延びられると言う証明は何も無い。それは実動部隊が逆に証明してしまったからだ。しかし、かと言って、このままだと組織も、やがて壊滅するだろう。それは分かっていた。だから実動部隊によって、解明せねばならない事が必然なのだ。問題提起者は、恐らく実動部隊に関する何かの開発で、疑問に突き当たったに違い無いのだ。
この会議での恐らくトップであるのだろう、その人物は言った。
「そして、行き着いたのは、電波を通さない、無線が出来なくなる。電気と言うものによって通信も、コントロールも出来なくする自国防衛に向ったのだ。つまり、当時戦争を仕掛ければ、核などによって一瞬で我々の星は壊滅される。防御手段は、これまでの利便を奪ってしまったが、逆に文明をすら放棄する事で、自国の生き延びられる方策に落ち着いたのだ。そこまで科学戦争とは陥ってしまうのだと言う事を、先人は教えている」
「それが・・今の状態ですか」
「一方、そう言う科学兵器と同時期に、生物による兵器が開発された。それは、各国によって実に様々だ・・その生物兵器の恐ろしさを知る事によって、益々今度は自国防衛と言う国策に向うのだよ。そしてこの組織とは、他から隔絶された研究施設の一つだと思いたまえ」
「そんな・・・そんな状況になるまで国は・・」
「そうだ。国は何もしなかった。いや、出来なかった。攻撃すれば、攻撃を受ける。核使用も愚かだが、もっともっと怖いのは生物兵器だ。その生物が、クローン及びDNA改編によってどのような突然変異的なものに変化したかは分からないんだよ。それを探るために、少なくても周囲に存在する未知の生物・・これは、もう分かっている筈だ。数々のチームが憂き目に遭った」
「じゃあ・・我々は・・」
「少なくても、組織では後100年分は、食糧の確保も出来ているし、この隔離された組織内で生き延びる事は出来る。又、その間に我々とも座して死を見ている訳では無い。食糧の自給自足や、他の隔離組織などへの連絡をも、日夜思考錯誤の中で考えているんだ。それは、他からの組織においてもきっとそうなっているだろうと思うが、全く詳細等は分かっていない。或いは、国自体が崩壊した所もあるだろう。愚かな・・何と愚かな者達だと私は思っている。しかし、方法はこれしか無いんだよっ!」
そう言ってどんと机を叩くそのトップの顔は、苦渋に満ちていた。