第二章その四 個性
「確かに大変な作業だった。改めて人間の出来るものって言うのは、ほんの微小な事だけなんだと思ったよ。既にそう言う科学の時代だったんだ、115年前にはね」
「プログラムも、自動で作成されていた?」
「そう・・シン君も分かっていたと思うが、簡単にセキュリティを解除されたのでは、簡単に国家機密なんて漏れてしまうからね。この産業資料館は非常に大事な国家的遺産であり、その国の技術や知恵や、文化・・あらゆるものが収められているからさ」
「それが、どうして、第1ドーム近くにあったのかと言う意味も含めてだね?」
「そう、役割だと思うんだよ、シン班長だからこそこんな話も出来るし、今の俺達にとって会話こそが重要な手がかりになる。そして、個々に眠っている知識・能力を開放しなきゃいけない時なんだと思う」
「個々に眠っている?」
「ああ・・仮説だと聞いてくれないかな、でも、第1世代が突然冬眠から覚め、何年活動したかは分からないが、突然この世界から消えた。シン班長の疑問と、色んな事も含めて謎ばかりがずっと俺達の目の前にある」
「そうだ・・とにかく不明な事、未知なもの・・そんな状態でずっとやって来た。俺達は実証するしかないと思っている」
「そこで、来て貰った最大の理由とは・・これを見てくれ。ラン君、ヤマイ君、両博士はまだずっと作業をやっている」
「ご苦労な事だ、不便だろうこの第2ドームでの生活も含めてね」
「ここは安心だ。少なくても外敵に襲われる心配も無いし、各部屋も個別であるしね」
「かと言って・・この前聞いたと思うが、オオコウモリの石爆弾には正直びっくりした。今の所攻撃は無さそうだが、このドームの屋根だって破壊される心配もあるんだぜ?」
「ああ・・少なくても脅威だと思っているが、今は、どうしようも出来ない。大砲の効力も少なからずあるだろうが、そう簡単にドームがやられるかなあ」
コウタ班長が少し意味深な事を言った。
「コウタ班長・・その理由があるのか?」
「まあ・・これも丸秘情報にはなるが、かなりの高性能破壊爆弾でも壊れない素材を使っているようだ。尤も、本当に脅威な事は、マコト副長の言う通り、第1ドームの太陽光発電システムだ。しかし、もう115年も経過し、発電自体の供給量は非常に落ちている。つまり老朽化していると言う事だよ。専らの所、組織の第一目的はそれに代わる、或いは水力発電に代わる発電設備なんだよ」
「そっちか!」
シンも眼をくりっとする。
「そっちだよ、最初っからね。だからこそ、俺に第1ドーム最高の知能の者達を託してくれたんだよ」
シンは改めて、組織の本当の狙いを知った。
「じゃあ、地熱発電と言うのは現実味を帯びている?」
「帯びているね、エネルギーが無尽に供給される。これこそが自給自足と言うやつだよね」
「そこなんだ・・」
「そこだと思う。でも、簡単な事じゃない」
「だろうね・・」
シンは、どのように稼働するのかは想像も出来なかった。




