第二章その四 個性
「有り得る話で、それも喫急の事だね‥今まで・・そこまで思いもしなかったが、そんな捕獲行動をしていたと言うのかね、オオコウモリが」
「ええ・・たまたま目撃したのは、ごく最近の事でした」
「何故、早く言ってくれなかった、マコト副長」
シリマツ官吏が、少し険しい顔でマコトに責めよった。
「あ・・でも、そこまで思いが至りませんでした」
エライ班長は、すぐ、
「シリマツ君、それは仕方が無いよ、でも、手遅れになる前によくぞ言ってくれた。補強をとにかく総動員してでも、主要道に関してやって貰おう。2重、3重の用心はしといた方が良い。それに、高射砲の射程距離も確かめて、オオコウモリの足に石が握られていないかも確認せねばならない。彼らは、実験の中で、色々試しているんじゃ無いか?その効果を。だとしたら、その昔、人間のコントロール下に置かれて動いて来た姿では、到底オオコウモリの実態には迫れない」
この憂慮はただちに報告され、これは通路だけの問題では無かった。ドーム外壁の天井部屋根にある太陽光発電システムも破壊される可能性があるのだ。と、なると、第2ドームどころでは無い、第1ドームの機能すらも半減、或いはストップするかも知れないし、住む環境すら破壊されかねないのだ。大編隊でオオコウモリが襲って来たら、ひとたまりも無いだろう。昼夜を問わず、攻撃出来るオオコウモリ達なのだから。
工事は可及的速やかに行われた。マコト副長が言うように、確かに石、或いは何かを足に握り飛行するオオコウモリは、何頭か確認されたものの、それが通路や或いはドーム上空にて落下させると言うような事は、今の所は確認されなかった。だが、実際十分あり得る話なのだ。ドーム周辺には、かなりの高射砲が設置される事になった。第2ドームの場合については、今の所、大型大砲が数門設置されはしたが、あくまでも予備的なものであるし、高射砲にしても大砲にしても、撃つべき弾が余り無かった。オオコウモリの数を考えれば、やはり人間側の圧倒的不利は否めないのだ。刺激は避けたかった。今まで通りである。
その状況の中で、コウタ班長にシンが呼ばれた。
「何か?」
シンが聞くと、
「ああ・・君が持ち込んでくれたカードについてかなりの事が分かって来てね、ラン君の資料とも合致した。このカードはどうやら、塔についての重要なもののようだ」
「そうか・・やはり」
「君も何か感じていたんだね、そこは。ラン君も色々君と話をした事を伝えてくれたよ」
「そうなんだ・・何故、第1世代の先祖たちが、悲観して、怪しげな儀式を行ったのかも、分からない事ばかりなんだ」
「うん・・塔については、俺達もヤマイも、幾何学的模様の画像を持ったかなりのセキュリティがかかっている事もあって、解除に時間も費やした。やはり結果的には、地下熱による発電施設らしい事も分かった。ただ、その電力を持って、高分子砲なる仕組みは全く不明だ。そこに変わりはなかった」
「カードとは関係無いのかい?」
「いや・・関係無くもないと思う。ただし、カードをどう挿入すれば、塔内部にあるAIが起動するのかは分からないんだ」
「じゃあ・・やはりAIを動かすカードだったのか!」
「そうらしい。でも、電力が無い以上は、やはりどうしようも無い。それに、カードをそのまま解析する事も無理だ」
「そうか・・でも、かなりの進展には間違い無いんだな?」
「そこだけは、大変な発見だったと思う。君を呼んだのは、第2ドームのセキュリティが解除出来てね。手動になるが、少しずつ稼働出来るようになった」
「おう!じゃあ、そっちの方が大進展じゃないか!」
シンは喜んだ。




