第二章その四 個性
「これだけの施設だ。管理も含めて、ケース内のものは全く朽ちる事なくそのままの状態で保存されている。恐らくガスが充填されていて、それがあって貴重な資産となっているが、その管理システムの中から、保管資産の全ての一覧も出て来たし、使用目的や、使用法まで分かったと言う、また、このガスの成分も分かったと言うが、生産の出来ない状況には変わりはない。この狭い日本の国土には、輸入と言う手段で無ければ手に入らない資材・原料と言うものが一杯あるからな、それも不可能の状態だからさ」
「だろうね」
マコト副長も頷いた。
「そこで、組織がやろうとしている事は、限られた資材で稼働出来るもの・・つまり間欠泉等地下熱の蒸気で発電できるシステムならば、資源は要らない。つまりそう言う事なんじゃないか?3Ⅾプリンタの歴史と変遷なんて収蔵もあったけどさ、限られた資材で、今出来るものを生産する事は出来ると俺は思う。今の3Ⅾプリンタだって、相当旧式のものらしいぜ。高度なものはあるが、AI稼働であり、無用の長物化しているそうだ」
リンが言うと、ケンは少し肯定しながらも否定の言葉、
「リン、言う事は尤もだ。確かにそう言う事は考えられるだろうし、可能性も高い。けどさ、今更人がやると言う技術も無ければ、知識も無いんだぜ?動かしていたのは、産業ロボットに組み込まれたAI端末なんだよ。それに、一つの資材だけでは殆ど何も出来ない。限られたものしか生産なんて出来ないんだ。鉄砲とは違うよ」
「鉄砲を作るとは言っていない」
リンが否定するが、
「いや・・鉄で出来たもの、アンチモンも少ないものの、ある程度確保が出来そうだと言う事だ。それにがらくたを溶かして精錬すれば、少々の金属も利用出来るだろう。でも、俺達はあるものを利用するしか無い状況に、殆ど変わりが無いと言う事だ」
「発電が可能になれば、AIも動かせるのでは?」
リンの考えはそこにあったようだ。
「動かすキーを探していると言うのかい?」
マコト副長が少し厳しい顔になった。
すぐシンが、
「いえ、キーを探し当てたとしても、そのAIが、過去電磁パルス爆裂の引き金になっていたのだとしたら、とんでも無いですよ。簡単には解除は出来ません。ただ、俺達がその存在を知る事は重要だと思うんですよ」
「組織がそれを求めている・・?」
「さあ・・分かりません。しかし俺達を動かしている組織が、もう少し情報を開示して欲しいなと言うのが本音ですよ、皆もそう思っている」
「確かにな・・俺達は何も知らされてなさすぎる。過酷な実働ミッションにしてもとにかく行け、探せだったからなあ」
マコト副長も、溜息をつきながらそう言った。




