第二章その四 個性
「堂々とやれや。お前の情報取得を上が許可しているのなら、望めば与えられていた筈だ。それを自分でやる必要がどこにあったのかって言う話さ。実は、後ろめたい思いがあったからじゃあねえかよ、ラン」
「う・・それを言われるとな」
ランのトーンが下がった。
「まあ、その辺にしとけよ、リンもさ。じゃあ、検索して見てくれ。相当の情報量がそのPCに詰まっているのなら、コウタ班長にも提供してやれよ」
シンが少し厳しい顔。そうだぜと、ケンもリンも思った。
「あ・ああ。手助けはするつもりだったんだよ」
「先に言うとけ・・アホが。重要な局面に入っているって言うのにさ」
「待った・・待った・・後でお前らの意見は聞く」
ランが3対1で分が悪くなったので、話を中断した。
ランが、かなり個人主義に走っている男だと分かっている上で、3人はこの際だからと注意した。重要な情報は出し惜しみするなと、もうそう言う状況では無くなったと言いたいのだ。ランにもそれは痛烈に胸に響いていた。個人主義でシンは、もはや動いては居ない。今までのような友達感覚での付き合いではいけないと思い直したのである。
ランは、この形状をデジタルカメラ=この時代の物は、かなりの高画質に取り込んで、検索をかける方法を試みた。しかし・・それで画像識別をかけるが・・ランは落胆の言葉・・
「駄目だ・・この画像での検索には引っ掛からない」
「こう言う物が製造されていないと言う事か?」
「何か、特別な物だと言う事だけは分かる。だから、一般的な検索では出て来ないんだよ」
「じゃあ、工業的なもの、専門的なものになるよな?」
「それが・・そっちの画像登録が限られていて、やはり国家的セキュリティに引っかかるから極端に少ないんだよ」
「じゃあ、それだけ重要なものだと言う事になる。それじゃあ、産業資料館にあるんじゃ無いのか?コウタ班長の話では、収蔵物一覧は閲覧出来るようになったそうだ」
「待て・・それじゃあ、シン達が、この場所を疑問に思い、こうやって第14班全員・・ヤマイは居ないけど、揃って探索している意味が無い」
ランが顔を上げる。しかし、シンは首を振る。
「いやいや・・そう言う事じゃない。俺達には、抜け駆けしようなんて気持ちは毛頭無いよ」
「けどさ、俺達がこうやって探索している意味合いがあるだろう?第14班と言う他の班との競争意識は、勿論無いさ。でも、必然的に特命メンバーが揃ってしまった。これは偶然か?それも、お互い全く認識もしていなくて、特命メンバーだったなんて知ったのも最近だ。俺達には・・この第14班には何か違う目的があるような気がしてならないんだよ。だって、そうじゃ無いか。それなら、エライ首班長以下の第13班と一緒にやっていれば良いんだし、キョウ班長の第15班だってそうじゃ無いかよ」
「そこまで・・考えた事は無かったな・・でも実際エライ班長は、立派なリーダーだし」
「それでも3つの班分けになり、コウタ班も表に出て来た。他にも作業班や化学班、科学班、技術班もどんどん今では表に出て来た。全員が同じ事をやっていても意味がねえじゃんか」
「・・で?どうしよって言うの?ランは」
「もう少し検索させろ。簡単に分かるような代物なら、誰だって分かるってもんだよ」
「誰でもって・・はは・・でも、リン、ランの言う通り、ここまで自作のPCを持ち込んだんだ。せめて電源が切れるまでやらせて見ようや、それより、リンが気になるこの天井を少し見てみないか?」
シンが逆提案。




