第二章その四 個性
シンが促した。この会話だけ聞いても、リンが相当高い知識を持っている事は明らかだ。シンチームの第14班は、傑出したメンバーが揃っているのだ。ヤマイも今コウタ班長を手伝っているが、また一緒に行動する事になるのだ。
「つまりさ、あくまで端末と言う言葉で今まで言われて来たし、AI機能を有していると言っても、自己判断なんて出来る訳も無いんだ。今言ったように、そんな権限を与えていたらとんでも無い事になる。要するに、シンとケンがここへ来たのも、第1世代の動向を探りたいって事なんだろう?」
「ああ・・そう言う事だ」
シンもケンも頷いた。
「俺の考えを言うが、何で第1世代の者達が集団自決したんだよ。その動機が少しおかしいなって思って来た。でもさ、実際AIが殆どの指令を司っていたんだ。人間なんて出来る事と言えば、会議を重ねて決定した結論・・つまり最終決定のコマンドを発行する役目。そのコマンドについても、あらゆる検証を結局AIによって実行しても大丈夫か、シミュレーションされるって言う訳だろう?その世代の人達が、実際自立して何が出来たのかって思えば、やっぱりそこで自分達の非力を思い知るしか無いんだよ。違うか?」
「自決の要因がそこだと?そして自決は否定しないと言うのか?」
ケンが問うと、
「ああ・・第1世代は自決した、それは恐らく正しいのだろう。それがあるからこそ、今の第2世代があって、教育の必要性が出て来た。何故なら、人間はその時代、全てにおいて努力を怠り、慢心していたんだ。その科学最先端の世界で、利便な状況をな」
「成程・・リンの見解には説得力もある。シン、どうだ?」
「今一つ・・その状況が出て来る要因さ。確かに電磁パルス爆裂が起こった。誰も止める事も出来なかった。しかし、半永久的とも言われた電磁パルス発生は、20年後に半減期を迎える事を知っていた者は少ない筈。それを見越して、20年後に冬眠により目覚めると言う図式までは読める。そして、絶望・・その絶望は何の為?そうなる事は分かっていた筈の第1世代では無かったのか?全ては破壊され、都市機能は失われ、動物達も生き延びては居ないと言う現実が、想定外だったとは思えないんだよなあ」
「うん・・シンの言う事にも合理性がある。では、どっちなんだと言う議論に戻る」
「あのさ・・堂々巡りって話になりはしないか、こんな話をずっとやって来ているよな?俺達は」
リンが言うのをシンは制した。
「何度でも言うさ、議論もする。推論も立てる。でもさ、重要な部分なんだよ、ここは」
「集団自決がか?」
リンがシンに向かい言うと、
「ああ・・そうだ。そうじゃないと、塔の目的や、今コウタ班長達がやっているセキュリティ解除なんて言うのも、単に断片的に繋がった、OKでは駄目なんだ。稼働させた途端、本質が見えてない俺達が、いきなり虎を起こすようなものじゃないか」
その時背後から声が聞こえた。




