第二章その四 個性
「メモリーカードだって、即ランが言ったからさ、案外そうなのかって納得しちまったけど、慌てて戻って行っちまったよな、あいつは」
シンが苦笑い。
「確かにランの判断は合っているように思えたし、プロジェクターのペンライトも納得出来たんだがなあ」
ケンも苦笑いをした。シンは、すぐまたそのカードを、手袋をしたままで包み直した。
「でも、ランの事だ。あらゆる情報を引っ張り出して、この正体を探すだろう。で?リン、何かおかしいものがあったか?この広場にさ」
「いや・・でも、何か人工的なんだよな・・勿論鉱山の坑道なんだから、人工的なと言う表現は変なのは分かっているし、当たり前の事なんだけどな」
「お前の眼でも、この灯り程度では分からないか?」
シンが少しにやっとしながら聞く。そこでケンが、先ほどシンとやっていた話題を出す。
「AIがドームで稼働していると言う話は、リンも知っているか?」
「え!ええっつ!初耳だし、AIが稼働しているのなら、第2ドームの実質AIともコンタクトが取れるだろうが」
「だよな・・俺もそう思った。だけど、実働班が組織された。そこに何等かの障害があるからだと思う」
いきなり展開されるケンの話に、リンも付いていけない。
ランが帰って来る間に、3人の会話になった。
リンが言う。
「あのさ、ケンとは普段もあんまり喋らないけど、お前って相当の知識を持っているなとは思っていた。それは、お前の引き出しから出た答えか?」
「おっと・・リンの引き出しも開きっ放しで、どんどん奥から出て来るが、今回ここへあっと言う間に来たのだって、文明の利器なんてまるで関係無いじゃんかよ」
リンは手を振る。
「そこで俺と比べるもんじゃねえよ。でもさ、その第1ドームのAIって、用途は色々あると思うし、所謂端末の製造用って事だろうが?AIが幾ら優秀でも、それぞれのコマンド担当って言うのがあるから、今コウタ班長達が苦労しているんじゃ無いのか?それに、東京にあるメインAIが、全てを制御コントロールする司令管理システムなんだろうけど、最終的には人間が指令を下す権限を持っていないとならない筈だ。そんなの、勝手に作動してしまったら、少し前にこれも勝手にAI同士が電磁パルスボタンを押したって話も、そんな人間が既に頼りない感情の動物だとしても、それはまず無いわな、そこまで権限は渡したりしない筈だ」
「おう・・やっぱりリンも、そう言う部分をまだまだ持っていた。そうだ、そこは同じ見解さ。シンも俺もさ」
「ふ・・リン、もっと色んな事を言えよ、お前も」




