第二章その四 個性
「じゃあ、50歳の時の子になるよな」
「今の寿命が150歳と言う事で、そのまま生きている話ならば、50歳と言えば、まだまだ現役だよな。75歳までは子孫も残せるんじゃないのか?」
「そうだよな・・そんな話もした事が無かったよ、実際」
「する必要と言うか、俺達にとっては、そんな状況では全く余裕等無かった。今はコウタ班長と言う天才の力と、やはり特命メンバーであるヤマイ・・それにショウの兄妹なんだよな、メイ・リー博士とは」
「ああ・・」
「じゃあ、その2人も特命メンバーだろう。コウタ班長も、そうかも知れないぞ?センターと言うか、実働班を発見し、ドーム内に連れ帰ったメンバーが居るんだ。だから、それは俺達だけがドーム外の作業をした訳じゃないと言う推論にも繋がるわな」
「そうだ・・そこもおかしいと思っていた所だ。全員が回収と言う言葉はおかしいが、ドームに連れ戻された訳だからさ、回収しに外へ出たメンバーが居るはずだ。それは俺達じゃないのも確かだし」
ケンも頷きながら、言う。
「どうやら・・その辺の監視・コントロールと言う部分と、ドーム内AIも一部端末が稼働しているのかも知れない。組織の黒服と呼ばれるメンバーは、それを抑えている者達だと俺は思っている」
「AI・・そうか。やはりそこに来るか。AIが紛いなりにも稼働していると言う事か・・」
「な?シンがこの旧坑内、通路を見たいと言う事こそが、何かそこに突き詰める部分があるんだと思い、俺も喜んでここへ来た。シンの場合、分析力・判断力だが、俺の場合は、むしろデータ至上主義に近い。一つ、一つ検証して来た事を積み上げる方の恐らく能力を重宝されたんだと思う。俺に近い者も結構居るとは思う。ランも恐らく同じ匂いがするしな」
「言う通りだ。ランも徹底的に情報を分析し、突き止めるタイプだ。ヤマイも似ている。少しタイプは違うもののな」
シンは、その話には頷くのであった。
「だから、推論は余りしたく無いし、性格的に・・つまり基本的にそれが出来ないんだよ。シンとは今こうして対話的にやっているけどさ・ふふ」
シンは、改めてこのメンバー達は特別だなと思った。そして話を中断し、祭壇付近を調べ始める。色々見て回るものの、気になる祭壇には余り手がつけられて居なかった。組織にとってそれ程重要なものも無いからだろうか?そこを今回は重点的に探して見る事にした。金箔の仏像などは、3Dプリンタもこの時代の物は非常に高速度、高品質でしかも精巧だ。今もドーム内では、製造すると言えば、3Dプリンタが主で稼働しているそうだ。ケンは何故、そんなにドーム内の製造班の事まで詳しいのかは置いといて、これならば、山切りの木の精巧な物を作る事は出来ただろう。そして、未来にこの木と同じくらいの大きさになる事を想定されて建立されたのだろうと思われる。その時、敵国或いは生体武器の攻撃から身を守るべき役割と、秘密通路を考えていたのなら、これも成程、符号する。これも、推論であっても見事に繋がって来るのである。だから、個々にこう言う行動をしながら、互いに本音の部分をぶつけ合う事も必要だったのだ。




