第二章その四 個性
シンが、ここからかなりの個性を発揮してくるのである。今まで以上のそれは能力だ。彼には、そう言うコウタ班長が言うべき眠った才能がある。周囲は,シンの持つもっと深淵で大きな才能に感づいては居たが・・
それで、オオコウモリの攻撃が沈静化したかと言えば、続いていた。確かに大砲の効果は非常にあった。群れのリーダーを狙うと言う戦略において、人間が勝った。そのうちリーダーを失ったオオコウモリの群れが霧散し、あちこちに乱れ飛び、統率を失ったからだ。そして、大砲の音は、超音波攻撃をも粉砕した。このエライ班長襲撃時では、オオコウモリが数百体を失った。だが、勿論そんな数を失ったとしてもごく一部であり、その為にオオコウモリが沈静化し、攻撃を止めた訳では無かった。彼らは、或いは何かに対し、確かに怯えているのかも知れないとは感じているが・・。
シンとランが久しぶりに2人で話をしている。そこは、通路に近い山切りの木の樹上だった。コウタ班長があれからヤマイとタッグを組み、かなりのセキュリティ解除を行い、第2ドームの構造的なものも分かって来ていた。ぐんと、これで未解明部分が解析出来て来たのである。
「俺達の歩みは、きっと長い。恐らく寿命も尽きるかも知れんな。今第2世代が65歳と言うと、俺達はほぼ同じ年齢の25歳だ。エライ首班とシリマツ官吏は50代と40代。2人はもっと早く死ぬ」
「おいおい・・死ぬって言うなよ」
シンが苦笑い。
「だってよ、寿命がそれなら、えらい短いじゃんかよ、その寿命の中で、どれだけ現役でそれも現場で動けるんだよ。考えて見りゃ俺達だって、後25年も動けたら、御の字なんだぜ?」
「だからさ、何で寿命を決めるんだよ。65歳寿命ってのは誰が決めた?」
「実際に居ないじゃん、65歳以上の者がさ」
「その辺もさ・・恐らくコウタ班長は知っている、かなりの部分をな。それが第2ドームの事が、もう少し分かってくれば、よりはっきりするんじゃねえのか」
「そうだな・・とにかく分からない事ばっかりだ」
「失われた100年間・・途絶された外部世界・・第2世代の動向・・色々あるさ。俺達は、ただ第2ドームを探せ々であった筈だ。こんな俺達に、例え分かっている事があったとしても、上部が情報をほいほい渡したりするもんか」
「何か・・聞いていたら、自分達の立場に腹が立つよな」
ランが少し怒った顔。しかし、そんな事を今言っても仕方が無い事だ。与えられたミッションをすれば良いのが、自分達の立場なのだ。が・・彼らは、それ程無能な者達では無かった。だから、かなりの部分の情報をコウタが流してくれた訳だし、コウタがまだまだ情報を秘匿しているようには思えない。一緒に考えよう、探そうとしているのだと思う。
ここでシンが、
「AIブロックの端末セキュリティ解除まで相当進んでいるようだな、ラン」
ランが頷く。