第二章その三 次の一歩
ランは納得せざるを得なかった。ただ、鋭敏なランの感覚については、最近になってシンも分かって来ていたので、敢えて黙っていた。それぞれの者が同一列で没個性である訳が無かった。そろそろ各自の持つポテンシャルが顔を出し始めたのだ。
「その説で言うと、やはり寿命は65歳が限度位になっちまう。第2世代もどうなるのかな?ここは、単純な計算じゃなくて、重要な部分だと俺は見ている」
シンが今度は言った。コウタ班長は深く頷き、
「確かにそうだ。でも、君たちが感じているように、人類が画期的ながん撲滅を成し得た事や、人口問題、寿命の等でメスを入れて、115年前には相当医学分野での発展もあったと思う。その中に、がんなどは遺伝子の病気、そこをどういじるかと、寿命・・例えば、テロメア・へイフリック限界と言う事を知っているかい?」
「確か、細胞分裂の回数は決まっていると言う事だよな。だから老いが来て寿命も決まる」
「そうだ・・そこをいじると言う事は、色んな可能性を秘めているんだよ。だから、そう考えてもおかしい事は無い」
「ふうん・・コウタ班長は、かなりの部分に切り込んでいると理解して、俺達が第3世代と考えて間違いは無いんだな?」
「そこは、間違いないと思う」
「そうか、ならば、その冬眠明けの世界は、第1世代が思う展開にならなかったと見て良いんだな?」
「そう見ている」
シンは、黙って頷いた。2人にどのような相互理解があったかは分からない。ランが思うような展開とは違ったかも知れないし、また合致しているかも分からない。ランは黙っていた。
「そこで、これは個人感だ。そう言う解釈が無数にあっても良いと自分は思っているし、セキュリティコードのように、絶対それで無ければ合致しないと言うものでも無い。我々の世代は、秘匿された色んな事実を紐解いていかないと、この先が無いと言う事になる。その上で、今メイ・リー博士が取り掛かったAI起動のキーは、部分的なものに留めたい」
「・・と言うのは?また、部分的と言うが、そんな事が可能なのか?」
「恐らく重要なコマンドは、更にセキュリティが必然的にかかっているだろうし、逆に考えて見ても一端末からメインに繋がるような事があったら、大変だ」
「それは、そうだな」
「だから、産業資料館の収蔵リスト、使用目的、更に、ケース内には腐食しない何らかのガスが充填されている。そのガスも115年経て、この現状を保っている事を想像しても、或いは人体に危険が及ぼすものかも知れない。だから、簡単にこれを開ける事は出来ないだろう?良く調べなくてはね・・だからこそ、そのコンタクトを取る必要がある訳だ」
「それも、コウタ班長の言う通りだと思う」
「そうだ、俺も思う」
そこで、やっとここへ来ていたリンが口を開いた。
「ガスが補充されるような仕組みがきっとあるのだろうし、そのガスにしても、どこかに保管庫が無ければおかしい」
「ほう・・ここまでそこには気づかなかったな。探しても見なかった」