第一章 進の日常
「簡単な原理さ。一切組織外では、電波による指示系統が使えないと言う事だ。何らかのエネルギーかどうかは俺達には分からないが、一切無用の長物になる」
「それで、そう言う武具に?」
「そう言う事だ。外は鬱蒼と茂る森林が広がるのみ、一端その中で迷えば、戻って来る事も出来なくなる。だから、実動部隊の中で、死んだ者よりも戻って来られない者の方が、圧倒的に多いと言う事さ」
「そこも納得出来たぜ・・やっとだけどな。でも俺達は、伝達手段においては、互いの声出しによる位置確認や、互いに離れないように見える距離で進んでいたし、帰る道に目印を付けて来た」
「ああ・・そのシン達チームの働きのお陰で、かなりこの組織外の森林が開拓出来たんだよ。実動部隊の中には、木を切るチームも居たし、道をつける役目のチームも居た」
「ああ・・そうなんだ。じゃあ、どうして隔絶された?組織こそ、外の世界と隔絶されたと言う事を、ようやく俺達は最近になって知った所だ」
「それは、分からない。或いは組織の上で、情報を隠避されているんだと思う。だが、組織内に居る限り、敵は襲っては来ない」
「だな・・今までそんな事は無かったと思う」
「そこも俺達が知る由も無いし、全部を俺達が把握しろって言う話でも無い。それに恐らく、そんな情報等も流れても来ないだろう。じゃあ、サテン、ウテン。今度は俺が聞くが、その電脳理機とはどんなものだ?」
今度は黙っていたショウが聞いた。
「俺達双子だからこそ使える理機だとも言える。つまり、俺は左手、ウテンは右手。それぞれに武具としよう。それを持つ。2人が仮の対象物を敵と見なし、離れた場所からその武具を使う。武具の先端には、外の世界では使えないと言った、電波の凝縮した光が発射されるんだ。その仮の敵を粉砕する」
「おほ・・そんな武具なのか、ならそれが仮に使えるようになれば、外の敵に対処出来る訳か」
ショウが言うと、即ウテンの方が、
「おい、何を考えている。今も言っただろう。その理機は、外の世界では無効になるんだぞ」
「その無効になる原因・主因を研究している部署がある・・そう思うから言ったまでだ、ウテン」
「成程・・ショウは、そう言う事を理詰めで考えられる奴なんだな」
サテンが言う。
「あのさ、どうせ、この会話が筒抜けなら、俺達はこれも訓練の一環なんだと思うようにしよう。推理って必要だと思うんだ。それは、分析するのと同じ事だからさ」
シンが言うと、今度は5人であれやこれやと今知り得た情報を基に、随分長い間だったが、話し合うのだった。好きも嫌いも又相性も無い。彼らは既にチームとして決まったのだ。彼ら同士で争う愚は選択しなかったし、割と、互いに考えは一致していたのだった。思う事は、やはり実践を知っている共通項があったからである。