第二章その二 塔動く
「そうだったのか・・では、今ヤマイ君が提起してくれた事を実行出来るとすれば、塔の長さも大事だが、発電設備を稼働させる事。ここの端末ではあるが、メインAIを見つける事だな?」
「そうです。まずは照明を確保しないといけません。これだけの施設です。相当な電力が必要になる。しかも、それは途中で切れたり、電力量が落ちてはいけません。リン君の提案が非常に有効になるでしょう。我々は逆に指示出来る筈です。肥料を作る為に、作業班の要請をするのです。この第2ドーム近くに発電設備を作りましょう。今まで培って来た大理石建造で大丈夫でしょう。ウテン、サテン君と、ケン、カンジ君にも指揮をして貰いましょう。彼らなら十分にこの任務を果たせるでしょう。そこからこの電気タービンを、どうにか取り出し、稼働させれば、電源確保は十分出来ると思います」
「そんなに・・すぐにコウタ班長が、思いつくとは驚きだ」
シリマツ官吏が言うと、
「いえ、このタービンを見た時から電源確保の事は考えておりました。そして、どうしても、オオコウモリに対する脅威とその謎の生体は今も分かっておりません。なので、旧来式、大理石通路を延長しましょう。我々の不安やストレスが、ここで作業する上で消えますし、もう第2ドームや塔まで延長出来れば、広大な建造物は、一気に手中に出来る事となる。それを我々が隠した事にはならないでしょう?しっかり仕事をしているのですから」
「そりゃ、そうだ・・はっはっは」
エライ班長は大きな声で言い、笑った。
コウタは流石に天才だなとシンは思った。全ての事を、自分達がまず解明をし、想定する事も分析し、やがてその事も検証する上で、堂々と組織を動かし、大々的に、肥料を作ろうと言う事は、猪飼育や、鹿飼育にもつながる事なのだ。そしてそれは野外でも可能だと言う事になる。オオコウモリが襲って来ても、囲いを突破されなければ大丈夫だ。オオコウモリが自分達の食料となる鹿や他動物を破壊超音波で絶滅させる事はあり得ない。彼らの知恵が無いのなら、そうするかも知れないが、非常に知能の高いオオコウモリが人間を敵と認識し、襲う事はあっても、そんな愚策を選択する事は無いのだ。コウタ班長は更に言った。
「もし、電源が確保できれば、また端末であろうともこちらのAIにドッキング出来れば、今まで断片的だった情報が一気に取得できる事になる。そして、こららの機械を動かせば、製造が可能となる。ヤマイ君が言う地球外基地に存在する可能性も否定出来ないAIも、今は、不要な発信をしないでおけば、そんな地球外基地までの通信をする所まで今は考えられないから、後でも検証出来るだろうし、まずはそんな危険な事を今はしない。それより何より、一気に文明と言う言葉が嫌いだが、ドーム外の活動を選択したのだから、我々はそれを優先する。その先に、両ドームを行き来し、活動の場を人間が僅かでも広げ取り戻すのだ」
彼らの行動は早かった。幾つかの階には電池が採用されて、灯りが灯った。充電式の電池で、発電機は第1ドームであったから、それも運ばせた。サテン、ウテン達13人の残りメンバーだ。彼らも第一線に復活して来た。心強くここまで一緒に活動もして来たし、意思疎通も十分なのだから、ベストチョイスメンバーなのだ。




