第二章その二 塔動く
エライ班長が言うと、意を決したようにヤマイが、
「この産業資料館を見ても、特殊ガラス?アクリル?素材は分かりませんが、中に恐らく腐食しないガスが充填されてあって、全く製造されたそのままです。またシーケンスナンバー等もきちっとついております。巨大なケースは全て、メインコンピュータで一元管理をされていたと思われます。そして、ここにも当然端末がどこかにある筈。或いはここもAIが管理していたと言う事になると、それが稼働出来れば、記憶はそのまま蘇ると言う事ですよね。それに、それは当然開発されたのは、地球外基地において有効と言う事で、紫外線、宇宙磁力線など様々な要件にも対応できるもの。となれば、地球外でも稼働しうる可能性を否定出来ないと言う事です。また、宇宙から一度に地球に帰還する事は無く、我々の実働隊を例にあげても、何度も試みて、通信が途絶えた経緯も分析されている筈です。それは、ずっと蓄積されている可能性があります。またまた逆説的に、こちらのAIが稼働するならば、これらの産業資料館のデータそのものも取り出せます。また、最新式システムも、新品のまま保管されているのですから、地球外基地に交信も出来はしないでしょうか?勿論、日本以外の国に繋がってしまう可能性もありますし、それはむしろ高いかも知れません。でも、その時、全ての情報は一気に取得出来る可能性もあると思います。我々が休眠していたシステムにコンタクトを取ると言う方法論を思いつきました」
「何と・・ヤマイ君は、我々がこの原始的とも言える行動の中から、一気に115年前の過去最先端科学まで目覚めさせると言うのかね」
エライ班長が絶句した。シン達も当然驚くのであった。
コウタ班長が言った。
「それ・・ありかも知れません。なら、ここへ居られる皆様、我々の行動を後1か月後続の応援部隊を待機させ、もう少し具体的に煮詰めて見ませんか?いえ、単独行動をしようと言うのではありません。驚いた顔を一瞬皆様がされましたが、こんな我々の発想は、恐らく上部に拒絶され、否定されると思います。何故なら、もしそれが本当に成し得るのならば、我々が今度こそ完全に地球滅亡の舵を取る事にもなりかねません。ここは、だからこそ、この選出された特別メンバーだからこそ、非常に冷静で迅速な判断と実行力を伴いそれらの検証が出来るのです。ここは、神野黒服に内密の文章を作成します。我々が勝手な判断でやっていない事を極秘情報として、認可を頂くのです」
「コウタ班長・・君は、まるで密命を受けてここへ来たみたいじゃないか」
エライ班長が、余りにも簡潔に、それも神野黒服に連絡すると言う事を独断で言うので、首を傾げた。しかし、コウタは、
「はい・・私が動いて来たのは、組織がまだ十分に機能していない中、ここへ居られる事実上第2ドームの未来を託せる方達とのコンタクト、連絡役でした。そして、私もつぶさに皆様方を見て参りました。これ以上の方達は存在しないでしょう。故に、皆様方に情報を流して来たのです。勿論、私も非常に今ヤマイ君が言われたような有力な情報も頂いて来たのです」
そうだったのかと、シンはここまでの流れを思った。動きやすい、行動にも判断にも非常に迅速で、数々のテスト期間を経て来て、また人物的にも評価を受けたこのエライ班長、シリマツ官吏、マコト副長、シン班長、ラン副長、ヤマイ、リン、キョウ班長、ショウ副長、コウタ班長の10名が新たな特命メンバーとして指名されたのだと理解した。




