第二章その二 塔動く
「シン班長・・我々が今見ている地上2階には、115年前の日本の最先端技術がそのまま残っているようだ。君は、すでに配置などを頭に入れている筈だが、どう見るかね?ここを」
「はあ・・武器と言う概念を捨てれば、先祖はレーザーを多用して開発していた事が見えるような気がします。そして、それは医療分野に特に力を入れていたのかな・・と」
「そう!その通り私もまだ全体を把握できていないものの、変遷が見えるようだ。相当な科学技術が、ここに収まっているような気がする。人類はその時不治の病を刻々と克服し、更に、先天的異常を起こす、DNA設計・・遺伝子情報を書き換えた。だから、それまでの生命に関する概念が大幅に変わって来たと思っているんだよ」
「エライ班長は、確か鉱物やそちらの専門的知識をお持ちでしたよね」
「それは、君もじゃないのかな?」
「え・・俺は、それほどは」
エライ首班がにこっと笑い、シンに言うが、シンは手を振り否定する。やはり、相当な過大的評価を自分は受けていると彼は思ったからだ。
「まあ・・その話は置いといて。君が医療の最先端技術を日本は手中にしていた。つまり、この分野では、生体武器もそうだが、世界で比肩する国は無かったと言われている。大国と言われたA国、T国はその物量と広大な国土、人口においても世界を牛耳っていた。そして核による抑止力・軍事力・経済力を持って殆ど世界を動かしていた中心だった。しかし、国土の狭窄で、その当時人口減を加速する日本では、技術力・科学力・医学と言った方面でそれらの国に対抗できる手段を開発していたと言う構図が見えないかね?」
「はあ・・そう言う構図は、電磁パルス爆裂と言う手段に出ざるを得なかった、意図が見え隠れしているような気がしておりました」
「そうなんだ・・どの国が仕掛けたのか・それはもうどうでも良い事になるが、核抑止力はその時代でもやはり有効で、それが防御ともなっていた。それを破壊すれば、あっと言う間に秩序は破壊される。そこまで行き着くまでの経緯がここにあると思うんだよ。我々は知らねばならない。この時代に生きている者が過去を知らずして、何をこの先語れようか。そして、仮に人類の未来があるのならば、同じ歴史を歩ませてはならないのだよ。それが、生き残った我々の本当の使命じゃ無いのかね、私はそう思って、この実働班に自ら手を挙げた」
「そうでしたか・・エライ首班の並外れた判断力・リーダーシップには私も尊敬する所です。お考えは、まさしく神野イズムだと思います」
「そうか・・それを聞いて安心し、たのもしく思う。君達特殊訓練を受けた11名と、今歴史を動かそうとしているコウタ班長は、まさしくこの時代の革命児だ。今から何が起こるのか、また何を起こそうとしているのか、我々は、指令が出る前に自分達でその方向性を見極めようじゃ無いか。私は、自分の思う所と違うならばこのミッションからは引く覚悟だ」
シンはエライ首班の強い言葉に、一瞬言葉を飲み込んだ。神野イズムの方向性すらも、自分の思う信念と違えば、否定すると男は言うのである。
「君は君で考えればよい。だが、この時代には知恵が居る。行動力、判断力が居る。一歩でも間違えれば、人類はもう終わりだ・・私はそのつもりで行動をする」
「はい・・俺も考えます」
「うん」




