第二章その二 塔動く
「それがシン首班の真骨頂か・・理論的に組み立てられるんだね・・で、シン君の知識量はまだまだ隠されていると思うが、ラン君・・続きを」
エライ班長はランの言葉を更に促した。
「まあ・・シンが、俺の言動や、周囲の情報をきちんと整理し、答えを導く事の出来る者だと言うのは分かっていた筈なんですが、この通り、一番接して来て気心も合うと思っている俺が、こんな具合っす。で、肥料・毒の事も言いましたが、食物繊維・セルロースの研究はずっとやっていました。それらを複合的に利用して行けば、リンの提案した肥料にする時の発酵熱を使うと言う事は、エネルギーをほぼ無尽蔵に近い位に供給できるし、太陽光や、水力発電と言った不安定なものよりずっと効率的に利用出来ると言う案には、諸手を挙げて賛成っす。そこで、塔を動かす電力がどの程度なものかは分かりませんが、間欠泉を利用する電力量って、一瞬では無く、蓄電されるような性能だと思うんすよ。俺はここの話をしたいと思われているかも知れませんが、関連する施設や、我々の住んでいる所の立地条件であるとか、それらを総合して、まずミッションの真意を知り、それから動くべき立場を理解する・・そう思ってやってきたんす」
それには説得力があった。エライ首班は、
「ほう・・それがラン君の真骨頂なんだね。うん、それが、塔の高分子出力装置とどう言う関連性があるのかは、私も分からないが、この第2ドームと連携しているのは恐らく確かだろう。第1ドームとは、殆ど関連性は無かったような気が私にはするのでね」
シンは、そこには疑問を持った。少し首を傾げている。関係無くないものかと思っているからだ。ランは続ける。
「その第2ドームが、最初の疑問に戻る訳っす。どうして最重要基地であるのかの謎を解明するには、この第2ドームの電源確保だと思う訳です。俺の疑問をエライ首班達にぶつける訳じゃないっす。共に解明して行こうと言うのが今までの姿勢じゃないっすか。誰が功を奏した、一番だったじゃないと思うんすよ」
「分かった‥ラン君のその言葉だけで、今日ここへ我々が先行して来た意味合いも出て来た訳だ」
エライ首班もシン達の行動を理解し、ここで逆の話もぶつけ、反応を見た側面もあるなとシンは悟った。非常に聡明な人だと思った。会議とは反対意見もぶつけないながら、そこから本音を聞き出すと言う部分が必要なのだ。その点は黙っているものの、シリマツ官吏が一番その部分には長けているだろう。これだけ、今第1ドームにおいて実働の最高能力者が集っていると言う事だけは分かる。この者達が、恐らく今後も実働を引っ張って行くのだろう。エライ首班が、
「とにかく、この第2ドームを全て見て見よう。それにより、シン班長は、回った全ての配置や、展示品を私と一緒に見よう。今記録機器として我々が持てるものは古く、それも脆弱だ。その正確な再現が出来る者は、君しかいないからね」
「これ・・全部ですか?俺の脳には、そんな容量が無いですよ・・」
「は・はは」
周囲から少し笑いが漏れる。