第二章その二 塔動く
「はは・・何か、ラン、お前も銃マニアらしいけど、俺はそう言う古語の事が好きでな、色んな日本の言葉表現に興味を持っていた」
「ふ・・変な情報も仕入れているんじゃねえよ」
ランもショウと同じ趣向がある。笑った。ちなみにランはゲーマーの部類だ。ショウのように武具に詳しい訳では無い。ただし、どんな武具もすぐ収得し、使える事が出来る男だった。
それにしても、リンの隠れた才能がどんどん出て来て驚くばかりだが、エライ班初期メンバー13名は、やはり潜在能力を多分に秘めている者達だ。キョウは学術肌メンバーで、やはり頭脳の方では特異な者だ。その為、シン達の勘と言うのは失礼なものだし、咄嗟の分析力や、判断力に優れた面を誰よりも認めているが、その点は先に思考が先行するタイプなので、やり方は違う。それが個性とも言うべきもので、*この13人には後々、持ち得た個性が強烈に出て来る場面がある。この時代・・やはり、人類が生き残り、後世に繋ぐ役割があるとすれば、こう言う人間が本来有史以来持って来た・・否、原始時代から持って来た、教育され訓練されたものでは無く、先天的に持ち得た筈の第6感、特殊能力が必要なのではないかと一部の者は思い始めていた。
リンが、第2ドーム発見の事を報告すると、エライ首班達は絶句した。
*彼らはまだ真に能力を目覚めさせては居なかった。それには、自然と触れ合う実働経験が磨いて行くのだ。
「何と・・君達は、単独でその探索を行ったと言うのかね?」
言葉の先を、リンは読んでいた。
「動ける者は動く。それが俺達の実働班の指名と思い動いて来ました。以前、俺は、勇み足をして何とかお咎めも無くここまで来ました。その第一義・・第2ドーム発見が我々に課された一番の指名では無かったでしょうか。たまたま俺達が近くに居た・・それだけの事です」
背筋を伸ばして、真っ直ぐな瞳でリンは言った。その毅然たる態度には、流石のシリマツでさえも、口を挟む事は無かった。抜け駆けをしたのでは無い。俺達が先に発見したからと言って、自慢や手柄にしたい訳じゃないと言う態度には、驚きはしたが、怒る筋合いは無いのである。しかし、内心・・エライ班長、シリマツ官吏も第15班のキョウも居る事から、背後にコウタが絵を描いた事も悟ったのである。彼は、まず一番ふさわしい人物に第2ドーム発見を託したと見たのだ。
「分かった・・すぐ上に連絡をしよう。象の道が、リン君の言う安全ルートならば、オオコウモリは一切この道には現れていない。その事も含め、検証中の事だが簡単に結果が出るものでも無かろうし、ここまでの実証が今の所一番の安全策として選択する以外に余地は無いようだしね、事実君は単独でオオコウモリに襲われる事無く、ここへ報告に戻れたんだからね、幾ら君が優れた身体能力を保持していたとしても、その信頼がシン班長にあると言う事だ」
「は!」
リンは、その言葉を少し嬉しく感じだ。シンが自分に全幅の信頼を持っていると言う部分である。自分達だって、エライ首班には尊敬の念を強く持っているし、ずっと現場のトップだと思っているのだから。同時に、君達も信頼しているよの言葉なのだ。