第二章その二 塔動く
「ああ・・リンの眼だけは、段違いに良いからよ」
「何だと、眼だけってか・・まあ・・いいや。それにさ、シンが暴露しちまったから言うけど、俺は全然耳が聞こえない訳じゃないから・・耳に頼らないで済むように、確かに聴力は眼に比べると弱いかも知れないけど、きちんとお前たちの会話とオオコウモリの超音波位は聞こえるさ」
驚くべき事をすらっと言いやがった・・この男リンが・・シン達の眼が点になった。
「おい、リン・・何が眼に比べて耳が弱いんだよっ!お前、超音波を認識出来るってか?じゃあ、オオコウモリの超音波に対して、お前が割と平気だったのは、そのせいか?」
シンが聞く。
「よせやい・俺自身が何も分かる訳がねえよ。だって、俺以外にも誰でもそんな事は当たり前だと思っているんだからよ、ただ、言ったように眼だけは皆より良いってのは自覚しているけどさ」
ランの眼も点だ。全員、全く知らないリンのまた新たな能力が、いきなり披露さらたのだから・・それも人間の聞き分けの出来ない超音波域まで、リンが可能だと言う脅威の能力なのだから・。
「おいおいおいー・・リン。普通じゃねえし・・お前は、耳も特別仕様だったつうんだよ。でも・・良いか、今俺達に言った事は、他の者には絶対に言うんじゃねえぞ、俺達の胸にしまっておくわ・・」
「あ・・おう・・じゃあ、ひとっ走り戻って、エライ班長達に報告して来る!」
リンが駆け足でエライ第13班に報告に行ったのを、残ったシン、ラン、ヤマイ、キョウ、ショウが、顔を見合わせあった。
「おい・・あれ、あいつは、とんでも無い化け物だぞ、リンの奴はよう」
「視力・・そしてかなりの周波数を聞き分ける耳を持ってやがる。てっきり、あいつは耳が悪いって思っていたが、逆だったんだ。俺達の会話なんて、あいつにとっては、子守歌のようなもんじゃ無いのかな。だから殆ど頭に入れて無かったんだ。あいつはそれを封じて、勘だけで今まで動いていたんだ」
「それって・・頭が悪いって事か?」
ランがおちょくりながら突っ込む。
「あはは・・勿論違うし。ランのように、耳栓って言うが、お前は音楽を聴いていたんだろ?実は」
「あ・・こいつ、暴露しちまった。つうか、音楽じゃねえよ、色んな古い時代の情報を入れた音声データだ」
「じゃあ、ランも殆ど勘で応対していたのかよ」
キョウとショウが又眼が点に。
「だから、アイコンタクトがありゃ、会話が無くても通じ合うっての」
シンが笑いながら、2人に、
「あいつの情報は、視覚や、危機を感じる他動物・・つまり最大周波数幅の超音波を駆使できるオオコウモリの動向に、常にアンテナを張っていたんだ。つまり、リンは生きるレーダー見たいな男だったんだよ。走力、機敏性・・それもぴか一だしな」
「そうか・・やっぱり、俺達の中では能力が異質だとは思っていたし、あいつは肥料にも詳しいしな、確かにおつむがパーじゃ無かった」
「ふふ・はっはっは。ショウ・・お前は表現がおかしいな、おつむがパーってか」
ランが大笑い。ショウは何度も言うが、超美女と見間違う金髪で、火薬などに詳しいし、情報や分析にも非常に詳しい男だ。ここでは発言が少ないが、しっかり、状況把握が出来ていると言う事である。