第二章その二 塔動く
こうして、扉は左右に開くタイプのものだ。つまり引き戸形式であり、恐らくここが通電していれば自動扉であったのだろう。勿論、電源は切られていた。誰もここに居ない証左である。
油壺を照らすと、眼前の光景が飛び込んで来た。
「うお・・これは・・」
真っ先に見えたのは、受付のテーブルだろうか、これも真っ白でつるつるの大理石だった。その奥に、中央、左右にアクリルの大型パネルが四角に囲まれて整然と並んでいた。
「これは・・標本展示か?」
確かに、それは剥製なのだろうか、日本で生息していた動物達、また違う列には道具・機械類・武器や色んな産業物などがずらっと並んでいたからだ。そして、その規模は思ったよりずっと大きかった。地下1階から3階、地上2階の五層になっていて、とんでも無い種類・数の収容物だった。
「ここは、資料館と言う事か」
「なら・・ここでの展示そのものが、全て過去に生息した実際の動物・産業の遺物となる」
「全てとは大げさじゃ無いのか?東京には博物館があると言う事だし」
「じゃあ、歴史民俗資料館のようなものか?これだけでも肝を潰している俺達だから、想像も出来やしない。全ての把握なんて困難だ」
「そうだな・・やはり、組織が探している何かがあると言う事を理解した」
「シン・・どうする?」
最後にシンにその問いが来た。
「え?ここには、第15班のキョウと言う班長も居るのに、俺に聞く?そこを」
「ああ・・ここではお前が班長だと皆が思っているし、俺達が最初に発見した。その事を持って目的は果たした。俺達にこれらの標本をどうしようと言う事も出来ないし、何も出来ないよな、実際に」
「でもさ、ここを探索するのは、1日、2日じゃ出来ないぞ?」
「俺達がそれをやる必要があるのかな」
ヤマイが言った。
「必要かあ・・それはミッション的には無いよな・・あはは」
シンが笑った。
「ふふ・・ずっとこんな感じなんだよ、シンと出会ってから。だから、はらはらどきどきの連続なんだけど、いつも何か発見にしても一番先だし、本当はものすごい事をやっているのに、こいつと居ると、何か自然に思えて来るんだよなあ」
ランが笑うと、他の者も同じ感覚だったようだ。全員が笑った。シンは、
「持ち合わせの油壺も足りない。そして、今から走って帰っても、夕方になっちまう。急いで帰ろう。エライ班長に報告するさ。ここは第13班から第15班。それに分析班も大勢来て調査しなきゃならない。組織がずっとこれを探していたのなら、間違いなく、収蔵の中に重要なものがあるんだろう・・だけど、一斉破壊超音波をオオコウモリが出す・・こんな事まで今回分かった現状だ。おい、リン・・頼めるか?お前の足なら、どうにか事情を先に話せる。俺達が、仮にオオコウモリが出たなら援護射撃をするさ」
「あ・・それなら、大丈夫だ・・ここを400M走れば、象の道に出ると思う」
「お・・先にそれも確認済みか・・リン・・お前が単独行動をして、塔に後から辿り着いた訳とは」
キョウが言うと、シンがにやっとする。




