第二章その二 塔動く
「さて、これだって扉が開くかどうかなんて確証なんて何も無いし、今初めて扉を擦り、100年間の汚れを払って、凹凸が見えただけだ。それに、この金属の鍵が、100年間開け閉めされていなかった扉だぜ?仮にそれが正解だったにせよ、開くかなんて思わなかったぜ、実際に」
「え・・じゃあ、半信半疑だったのか?」
ショウが、当たり前に扉を開けたシンに聞くと、
「ああ・・仮にそう言う目的だって聞いても、開くかどうかなんて誰も分かりゃしない。或る意味、これは俺では無い、コウタ班長の情報だった、今明かすけどさ・・本来黙っていろと言われていたけど、見ちまったもんな、それに、俺が何もかんも知っていて、ずばずば推理が当たっているなんて変な誤解も受けたくないしな」
「ああ・・分かった・・分かったよ・・じゃあ、ただの金属キーでは無い訳だ・・うん」
キョウが納得したようだ。
「ふ・・そうだろうな・・俺は構造なんて知りはしない。けど、暗号があるとだけは知っていた。それが、AIが始動しない時の緊急のものだったようだ。そんな情報は・・キョウ、お前だって隠密メンバーだろ?聞いた事は無かったか?」
シンが言うと、キョウが、
「それは聞いた事があるが・・」
「そうか・・なら、もうこの鍵の事では聞くな、そして喋るな・・良いな?2人とも」
「ああ・・分かった・・」
2人は黙って頷くのであった。
「一斉攻撃があるかも知れないなとは、思っていたんだ。オオコウモリが俺達の動きをずっと監視していたからな。人間が武器を手にし、かなりの仲間がやられている事も、勿論認識しているさ、だが、自分達が襲わない限り反撃して来ない事も学習している。そして、何が人間に対して有効かを考えていたんだろう。確かに超音波の一斉攻撃は、有効だろう。これだけ俺達も、経験の中からオコウモリが、聴覚を破壊しかねない超音波を発すると分かっていたから、準備もしていた。勿論、リンと俺が一番最初に気付いたのかも知れないが、報告もシンツールで上げている。だから、多少なりとも俺に評価は下ったのかも知れないが」
「ああ・・十分過ぎるぜ・・それは。だって脳内を揺さぶられ、殆どのそれまでの実働班は精神に異常をきたしてやられちまったんだ。それが主原因だと突き止めたのは、シン達だ」
「まあ・・リンの場合はまた特殊だがな・・ふふ」
「?どう言う・・?」
「ふ・・そのうち分かるさ。あいつの身体能力は、一種独特だ、今はそんな情報は良いじゃ無いか」
「あ・・そのリンがここに居ない・・大丈夫か!」
キョウが慌てるが、シンは笑った。