第二章その二 塔動く
ランが言う。シンも気づいた。
「オオコウモリが何か企んでやがる・・おい、皆一端固まれ・・窪地の所に集合しよう!」
慌てて、全員が窪地に集合した瞬間だった。勿論、サイレント銃を構えている。オオコウモリの動きが、旋回から何か編隊を組むように、整然とし始めたのである。
その時だった。
「うわ・・耳が痛い・・」
シン達は、耳を抑えた。オオコウモリの超音波攻撃は勿論知っていたし、今までも経験をして来た。耳栓をしているのは、初期実働の頃からも、ずっと当たり前だった。この時もしていたし、キョウやショウにもさせている。だが、それでも、頭を叩くような強烈な振動なのだった。今回は、圧倒的な群れが、同一周波の超音波を陣形を組み、一糸乱れる事無く一斉に発したのであろう。それが予想外の超強烈な振動で襲って来たのだ。もしかしたら、これこそが生体武器オオコウモリの本当の武器なのかも知れない。建物すら破壊しかない振動波を伴うのである。まるでミニ電磁パルス爆裂のようにだ。
「こ・・こっちの、み・・耳栓を・・上から更に・・」
シンは、持っていた更に防音出来る改良型耳栓をメンバーに渡すと、リンとアイコンタクトを取った。ヤマイにも同時にだ。
そして、まるでこの事を予測していたかのように、窪んだその先に耳を抑えながら、キョウとショウには、手で合図をして奥まで進んだ。シンは、薄汚れた垂直の壁を手で擦ると、白い色が見えるのだった。耳を抑えながらも、キョウとショウは、それが何であるかを悟った。扉であった。まさしく、これこそこの第2ドームの入り口となるべき、本来の扉に見えた。シンは躊躇わなかった。まるで、これが扉の位置であるかのように、見つけていた事になる。それが、リンが既にアイコンタクトで位置確認した際に、シンの脳裏で瞬く間に設計図が完了していた事になる。キョウは驚いた。まさしくこれこそがシンの真骨頂・・否・・彼は奥が見えない程多種の能力をまだまだ隠しているのだろう。それも、彼が持つ瞬間画像認識能力の一つなのだとしたら、隠されていた才能では無い事になる。シンは、ごしごしとその扉を擦ると、凹凸のまるでこれも予想されていたかのような鍵?部分が見えるのだった。
「おっ!・・」
その声は、シン達にも誰にも聞こえはしない。だが、まさしく自分も塔内部で見た凹凸の形状に似ているのである。荒唐無稽と思っていた。そんな古風な象形文字のようなものがあるものかと・・だが、ここにあるのだ。キョウは思った。シン達はその凹凸が何であるのかを既に解読し始めていたのでは無いかと・・はっと思った。コウタ班長が、先にシン達に接触している・・そうか・・そう言う情報を、もしかしたら渡しているのかも・・そのキョウの推測はどうやら当たったようだ。シンはリュックの中からこの凹凸の形状と同じものを取り出すのである。
その扉左右にある凹凸の突起に、これも、持って来ていた、金属の型を左右同時にはめ込んだのである。