第二章その二 塔動く
キョウの眼がくりくりとする。非常に優秀だが、キョウはやはり情報に対して忠実で、それを実行出来る能力が高い。しかし、シン達第14班は全員、一種独特の思考回路を持ち、また特殊技能を持っている。それは、常識的思考から逸脱する事がしばしばあるのだ。それが故に、無傷で、実働から帰還している何か・・の特殊才能なのだろうと、キョウも思った。ショウとも少し違う感覚なのだ・
「その凹凸が何かヒントに繋がるのかも知れない。探して見よう」
やっぱり、その思考はキョウには繋がらない。シンが、意味深な事を言っているよなあと思いながらも、一緒に探し出すしか無かった。大昔の象形文字や、原始社会では無く、究極まで高めた科学最先端の時代だったんだぞ?と、従いながらもまだまだ懐疑的だった。しかし、いかにしても、この第2ドームを発見したのだから、入り口を探し出すのは必然的な流れであり、些細な事であっても思考を巡らせるのは、当然なのだ。その思考が、シン達とキョウとに違いがあるだけの話である、思考が柔らかいのかもな・・ショウは、その点シン達をそう評価し、案外自然にその行動を受け入れていた。
かなり周囲の藪の灌木を、持参していた鉈などで倒しながら、探し始めた。簡単にそんな入り口に繋がるヒントが見つかるならば、苦労などしていないのだ。ここまで第1ドームから数キロに満たない場所にある第2ドームを発見するまでに、どれだけの労苦を重ねて来たと言うのか、そんな地図情報すら出て来なかったのだ、今まで。人間がどれだけAIに頼り切り、使役されて来たのかと言う事に尽きる。自分達の日常を、日々決められたカリキュラムに従い、同じ事を繰り返し・・その結果として思考する事さえしなくなり始めた、何もかも、全自動に近い社会だったと言う事だ。その失った100年間の世界では、メインシステムが稼働しなくなっただけで、ドーム内を稼働させていた旧システムは作動しなくなった。だから、人間が自分の手でコマンドを作成する、更に旧時代の科学に戻らざるを得なかったのである。今の第1ドームが、それだけの機能でしか無い事を、シン達はある程度把握しかけていたのである。コウタ班長の言葉によって・・。
「ふぃ・・なかなか藪も凄くて、大変だよ、これは」
リンが弱音を吐いた。
「リン・・お前は、近くの高い木でも登って、全体を見回してくれよ、もう少し全体像が必要だ。お前は、眼を生かしてくれよ」
ヤマイが言う。
「は?ここには山切りの木がねえんだぞ?オオコウモリの餌食になっちまわあ」
「そうか・・そうだったな・・でも、オオコウモリはどうしている?」
はっとして、シン達が上空を見る。知らない間に、相当数のオオコウモリが上空を舞っていた。
「う・・何か、やべえかも・・動きが少し変だ」