第二章その二 塔動く
キョウが小さく頷くと、
「さて、入り口がどこだと判断する?シン」
「今到着したばっかりで、何も分からないのに、俺に木に登れって言うのかよ、キョウ」
ランが言うと、キョウは笑った。
「あはは・・もうリンが登っているじゃないか・・方向が分かれば、形状からも入り口がどっちの方向かは分かるよね。俺は、恐らく東向きだと思う」
「分かっているのなら、質問をするなよ、キョウ・・ふふ」
「ラン・・お前も見当がついていたんじゃないのかよ。でも、いやいや・・結構でかい建物だから、方向は分かっていても結構大変じゃ無いかな、入り口探しはさ」
そう言うキョウに、
「ふ・・もうリンが見つけた・・」
シンがにやっと笑いながら、
「え・!」
キョウの眼が点になった。また樹上にいるリンと、どう言うコンタクトを取ったのかも分からなかった。そう・・シンはラン、ヤマイ、リンにアイコンタクトを伝授していたのだ。それにより、言葉は無くてもある程度の情報を共有出来る。これは、いわゆる隠密技だ。それがシンの所属していた特命メンバーのやり方だった。ヤマイは勿論同じグループだったから、伝授する必要は無かった。キョウは、それを知らないのだから当然驚く・・。
シンが、
「さあ・行こう。外敵も今は見えないようだ。オオコウモリも、サイレント連射銃には相当警戒しているようだ。音がする銃なら射程距離も殆ど理解していたようだしね。こっちは射程距離も長いし、速度が速い分、オオコウモリにもまだ把握が出来ていないようだ。こちらも、むやみやたらに撃っている訳じゃ無いからね、手の内をそうそう敵に見せる訳にはいかないからさ」
「敵・・か・・嘗ての傭兵が完全なる敵・・それも脅威の・・」
キョウの顔が憂い顔。だが、それを悔やんでもどうしようも無い事だ。シンは補足説明的に言った。
「やはり奴らは相当知能が高い。それに、今度は鉄にアンチモン入り弾丸の飛距離と殺傷力が高まった。だからこそ今は最大限に警戒している見たいだ」
今度は、キョウと同じ思いを抱いているのだろう、自虐的な発言を・・
「人間が勝手に改良し、こんな化け物を作って、更に、放さずとも良かったのに、何に恐れたか、今度は用心棒のように使役しようと考え、はたまた今は、人間に害を成すから脅威の敵と見なし、排除の対象か・・つくづく人間と言うのは身勝手な生き物だよね」




