第二章その二 塔動く
「そうです。それがこの塔なんです。そして、間欠泉動力によって、既に電磁パルスの消えたこの世界で、周囲30キロ圏内における防御をした。その時、20年後のドーム外に、大葉を移植し、次に動物達を離した。山切りの木もその時、規則正しく植えたのにも、この塔の高分子エネルギーが均等に作用するためでした。そして、最後に放すオオコウモリの忌避用にも目的がありました。考えれば、そこまで日本は世界をリード出来る技術を持っていた事になります。世界を統一出来た国こそ、日本だったのでは無いでしょうか。即ち、それを恐れたのは、各国の指導者ではありません。AIに頼り切った国策とメインCPUの判断だったのでしょう。心を保持しない機械は、とんでも無い事を誘発させる。核の処理が、当時日本の技術力によってどうにか出来ていた事も、ある意味では幸運だったのでしょうが、それはどうでしょうね。第1世代が現状を悲観し、集団自殺した形跡を見れば、どうしようも無い自虐心がそうさせたのかも知れませんし、なんの為にこんな装置まで作ったのかまで遡って検証する必要もありましょう・・やはり人類は、少し長生きしただけで、いずれは滅亡するのですから。その先の未来まで生きていける展望も無い・・こんな生体武器が、再び目覚めた更に10年後の世界で、あっという間に動物界、制空権を席巻していた姿を見れば、動物を放した事も間違いだった事に気づく訳です。オオコウモリは放すべきじゃ無かったんです。いえ・・もう自暴自棄になって、放たれたのかも知れませんがね・・自分的には理解出来ない部分です・・あくまで個人感でお話をしますけれど」
エライ班長は唸った。
「うむう・・そこまで君は調べたのか・・」
「はい、調べました。しかし、今申しあげたように矛盾する事が多々あります。また、この*装置が2度目のエネルギーを放出する時は何時なのか・・そして、もう電磁パルスの消えた世界で、この装置が何の役目を果たすのか・・です。それが分からないから、苦悩しております」
「この装置を例えば破壊するとか?だって無用の長物になるのなら、もはや不要じゃないのか」
「ですが・・そうとも言い切れません。そんな破壊されていなければ、ずっと稼働すべき装置が、その10年の為だけに造られたとも思えないのです」
「・・・・」
*ずっと後に驚くべき方法で稼働されるのだった
エライ班長達は絶句した。とにかく、重要な事は時間差があってもコウタは彼らにも伝えた訳だ。そして、その時間差の中で、シン達は第2ドームの存在がある付近に到着していた。恐らくここには何かがある。しかし、ここで人類が生きている可能性は低いだろうと思われる。何故なら、生活、研究する目的の第1ドームに対して、ここは資材置き場?または何かの製造目的の場所?に相当するかも知れない・・そういう事もある程度情報としてここに来て出て来始めていたのである。
「確かに小高い緩やかな丘だね・・灌木が生い茂っているけど、この丘には山切りの木は生えていない。つまり、植林されなかったと言う事だ。そして電磁パルス爆裂によりあらゆるものが破壊され、粉塵になり、空中、周囲に霧散したチリが降り積もり、そこに草木が生えたと言う感じで、ドームを覆いつくしてしまったと言うように見えるし、誰も出入りした様子も皆無・・もはや、ここに人の気配もない。もし出たとしても動物達の餌食だよね・・食料も備蓄がなくなれば、そこで終わりだっただろうし」
「すごく冷静な分析だね・・」




