第二章その二 塔動く
その時ヤマイが言った。
「ひょっとしたら、俺達は本当に第3世代であって、その時記憶を消されていて、また年齢ストップと言う手術もあったのかも知れない。それは・・俺も言ってはいけないと何度も上から言われていたが、そう言う生体武器開発部署の丸秘事項だった」
「そうか・なら、なんとなく、第3世代のからくりは分かって来る。つまり、待っていたんだな?外の環境が整備されるまで。誤算もあった。オオコウモリの異常発生だ」
「それも、本来は一頭しか生まないが、多頭産めるようにDNAをバイオテクノロジーでいじったりしたんだろう・・そう言う事だ。生体武器や、今ドームで飼育の牛にしたって、一度に5頭、6頭産む。そして成長も早い。成長促進剤って言うものらしいや」
「成程・・俺達が両親を知らない理由や、今言う第3世代の説明もつくな」
キョウが頷いた。
「言っておくぞ、諄いようだが、俺達が聞いたのも最近だ。コウタが俺を信用して、教えてくれた。無論の事、コウタには組織に反目したり、おかしな考えがある訳じゃねえぞ。それに俺が、こんなにべらべらすぐ他の者に喋る男かと思われたくもねえからさ」
厳しい顔になって言うシンに、ランは項垂れた。軽率だったと思ったからだ。マコトはともかく、今度はキョウとショウもここに合流していたから、やはり軽率だったと思った。しかし、キョウは、こう言う。
「何か・・シン、お前はランを責めているようだがよ。そんなに責めるんじゃねえよ、察するにマコト副長に伝えたかった。でも、俺達がここへ偶然にも合流した。けどさ、俺達だって手ぶらで来ていない。真っ直ぐにここへやって来た。確かにマコト副長の居る前で、第13班が今も俺達の上の班だと思っているが、何故かシンの所に来てしまった。この情報をどうしようが構わないよ。真実は一つだ。そして、前にもエライ首班に言われたじゃないか。そんな情報を人より早く持っていた、人よりも知識がある。でも、そんなものはただの優越感に過ぎないとな・・シンは、それをひけらかせ、偉そうにもしたりしねえよ。それにコウタだって、そう言うシンだから話した。俺もだから話す」
「あ・・おう・・」
シンが、知らずのうちにランを責めていた事に気づき、ランにアイコンタクトで謝った。そのランも、少し勇み足を反省しているから頭をぺこっと下げる。
「実はな、塔より西方2キロに、確かに第2ドームと思われる不自然な丘があった。そう大きくは無い。俺達のドームと比べて約3分の1程だ。土や、灌木に覆われているが、恐らくここでは無いかと思って、シンと探索するつもりでやって来た。塔の間欠泉の記録・・そんなものは第13班にお願いしとくよ、ね?マコト副長。あっちには、錚々たる学者並みの頭脳と能力を持ったメンバーが揃っているんだ。シンには、実働が一番適するだろう優れた能力がある。もったい無いっすよ、実際」
「それこそ・・今日シン君の観察データを貰った所だ。観察が頭抜けている事は、エライ首班も認めているよ、何も実働主体じゃないさ・・そこはね」
「あ・・失敬。ふふ・・でもさ。そっちが先じゃないか?」