第二章その二 塔動く
キョウもそう言うと・・シンは、
「あまりこう言う情報を複数の者が知ると、後々面倒になるんだよ。でもさ、その第3世代、第何世代と言う間にはブランクがある。それは第1世代が冬眠をしたからだ」
「と‥冬眠?」
「今でも恐らく、その設備が地下深くにあると思う。けど、今それをやろうとも、意味の無い話だ。電磁パルス爆裂の継続期間は30年だ。それに対して、シェルターの耐用年数は20年だという事になる。第1世代は、20年冬眠をし、20年後のその耐用年数の時期に、今の塔が、全く電子制御の必要の無い新時代の革新的高分子放出装置だった。それを稼働させるのが、電磁パルスが半減測定される丁度20年後の時だった訳だ。それまでの期間、ドーム外の生物は、すべて例外なく死滅した。今のオオコウモリも、他の動物もすべてドーム内の施設で飼われていたんだよ。何故なら、第1ドームが研究機関だったって言う事は聞いた筈だし、今もその上で組織と言う形になり存続している。その高分子放出の時に合わせ、一斉に外に解き放たれた。それが今の現実。そして、高分子放出装置によって塔周辺の地域、おそらく30キロ圏内は、植物、動物の命は守られ、繁殖し始め、生態系や、植物系の息吹も復活した。ドームもそうだ、それにより守護された。しかし、第1世代の人達は思った。その時、予想したよりも悲惨で荒廃した台地になっていて・・それが、俺達が発見した岩山遺跡の宗教施設に繋がる事なんだよ。その人達は、第2世代に生き残れ・・ここから出るな・・と、彼らに生きる術を託し、集団自決した・・その間の理由は分からない。何か重大な事があったのは確かだとは思うが・・」
「なんと・・」
全員が絶句した。
「第1世代が復帰して10年後、外の世界では既に電磁パルスは半減し、殆ど消えていた。だが、それが実際に人体や動植物に与える影響までは、確かめられては居なかった。しかし、第1世代のその強い保守の言葉が、脳裏に残っていて彼らは外へ出る事は無かった。だが、それでも今と同じように外へ出た者が居る。勿論、生体武器オオコウモリが彼らを襲った、当然だ。生体武器はそうあるべき育てられた、それこそ、体に施術を施された第1世代なんだからな」
「オオコウモリの第1世代?ってか・・人間と同じように?」
「ああ・・遺伝子工学と言うのは、相当発展していて、当然人間にも、他の動物にも施されている。これは確実な情報だ」
「そうか・・だからこそ、生体武器が電磁バルス半減期も生き延びた」
「だろうな・・他の動物もだと言う事になるだろう。しかし、その後、何度も外に放された可能性も高い。こちらも確実な情報だ」
「オオコウモリもと言う事か?」
「勿論さ・・オオコウモリを放つのは、外国からの生体武器を防御する役目を担っているんだからな」
「その外国の施設が、健在かどうかも分からないのにか?」
「愚問だな・・分からないからこそ、防御手段を先に取る・・それは、戦略だと俺は思う」
「分かった・・、続けてくれ」
「武器が必要だと思った。既にこちらの戦争道具にしても、全て電子制御の武器だ。そんな電子制御の使えない世界では無用の長物、故に数100年前の武器を模し、ドームに保管していた事で、それは保存されだ。何故100年もそのまま保存されたかは分からないものの、当然腐食しないような特殊塗装だろう。それが、また第2世代の・・それは今の黒服連中だと俺は見ているが、その者達によって岩山に戻された。何でそんな事をしたのかは分からないけど、そうしたんだろう。誰かがこの鉱山や、通路の情報を持っている筈だが、出て来る事は無いものの、高分子放出が何であるかは勿論分からない。しかし、稼働した事は確かだが、今はその間欠泉エネルギーも満ちていないから作動もしないだろうし、もう100年も経ったんだ・・使える代物かどうかも分からないじゃないか」
「だ・・なあ・・朽ちていてもちっとも不思議じゃないわ」
「そんなものをどうして探しているのかも謎さ・・そして今の黒服の年齢・・俺達は・・これが第3世代と言われているんだよ。空白の時代は更に分かっていないし、その辺の検証は、まだだ。だから、ラン・・ここまで俺に言わすなよ・・な?分かったか」
「ああ・・すまん、だから確定では無い・矛盾の年代の系列なんだな・・」