第一章 進の日常
ランは頷いた。
「そう言う意味で、この巨大組織は、個々に能力を特化した編成だと言う事になる。その全容は分からないが、エキスパートが必要だと言う事だ。故に、タテの指令系統が絶対服従的に降りて来る。しかし、ヨコの繋がりは一切無かったし、その情報が漏れて来る事も無かった。俺達は命じられるままに実動部隊として動き、そして、何を目的にミッションを行っているかも知らされる事は無かった。その結果かどうかは別にして、多大なメンバーを失ってしまった。敵が、つまり我々の能力を飛び越えた存在だと思うよな?ここで」
ショウは、実に理論的な男だった。しかし、その分析は確かのようだし、事実だと2人とも思った。
「じゃあさ、今3人だけど、どの程度の編成チームになると予想する?ショウは」
「何となくだけど、10人編成位じゃ無いかな。バーチャル訓練なんて、今まで無かった体感刺激訓練だったし、そんな必要がある敵と言うのは、どんな対象だと思う?」
ショウは2人に疑問を投げかける。この時点で自分達が闘う対象は、まだ全く見えていないのだ。見えない相手に完敗したのである。
「エライリーダーが言っていたけどさ」
「ん?」
シンが口を開くので、今度はランとショウが耳目を傾ける。
「これからは全く今までと違った編成になるだろうと言う話さ」
「うん、それで」
「つまり、今までの話を総合するに、猪突猛進だった。相手の分析も出来ていなかった。体力・能力だけでは駄目だ。情報収集と分析する力が必要だ。その上で指揮する者が必要だと言う事になる。今のエライリーダーは、俺も2つ以上チームに参加して来たが、トップに立てる技量・能力が相当高い人だと思う」