第二章その二 塔動く
「ほら見ろ・・結局はそう言う話になっちまうんだよ、シン」
ランが言うと、シンも、
「だから隠すつもりなんてねえよ。でも、断定できるものが何一つない状態で、いい加減な事は言えないじゃないか」
「でもさあ・・」
ランが口を尖らす。
「ここまで言ったんだ。それに隠すつもりもねえよ。良いか?ため口で言うぞ?マコトさんも良いですね?」
「あ・おう。勿論さ」
「先日化学分析班のコウタがここに来た。遠藤と言う班長さ、知らない者は、コウタと呼んでくれと言う事だから・・それで続ける。そのコウタが言う事には、その昔、やっぱり日本人はありとあらゆる選択肢を持ち、電磁パルス爆裂の前に準備をしていた。ドームもそうだけど、俺達第3世代ってずっと聞いていたけど、誰も不思議に思わなかっただろ?電磁パルス爆裂が起きた時、人の寿命は150年だって言われていた。でも、実際に子供を産んで育てる適齢期と言うのがあって、25歳から35歳と言うのが一般的だ。それによると、ドームの第1世代と言うのは、その時には働き盛り・・どう考えても25歳から35歳と言う事になるよな?」
「あ・・・うん・そうなるか・・」
「だとすると、第2世代がそのままドーム内で子育てをすると、第2世代が25年後から35年後、更に第3世代が、50年後から60年後、第4世代が75年後から85年後、その第5世代が適齢期になるのが、100年後から110年後・・つまり今の俺達の世代にならなきゃおかしいんだよ、それはそうだろ?」
「え・・あ・・そうなるのか・・だって、ずっとそう聞いて来たよなあ・・」
「だな?そう聞いてきた。俺達は自分の親さえ知らないんだよ、おかしいじゃないか。それにその第1世代の一般人と言えばおかしいが、俺達以外の任務以外の人達と言えば良いのか、作業班も勿論俺達に含めて、第2、第3世代の人達を見たことがあるか?一度も無いし、今はフルオープンになっているのに、誰も知らないんだよ。おかしいだろ?」
「そう言えば・・長老・・黒服と呼ばれる第2世代が、50歳から60歳だよな。一応65歳定年と言う事になっているから、現役世代がそうなんだと思っていた。でも、どこへ居るんだ?」
「どこへ行ったのか・は分からないんだよ。でも、自分達が何故第3世代と言う事にこだわったのが、コウタだ。実はここにも検証が入っている。勿論、つい最近の事で、今これを言うつもりは無かったんだよ、ラン。思わないか?」
「俺も話を聞いて、あ・と思ったが、追及した事は無かったな・・」
ランが言うと、キョウは、
「まあ・・それを知って、俺達がどうこう出来る話じゃないし、今は塔の調査がメインだろ?そんな事を言ったら、皆も混乱してしまうじゃないか。でも、俺はこのメンバーだからこそ、言おうと思った。皆、口外無用だぞ?守れないなら話さない。俺は聞かれても最後まで言うつもりは無いが、そう決めて話を聞いたんだよ」
「済まん・・そこまでの決意があったんだな」
「ヤマイは分かっている。だな?」
「あ・・おう。俺は、シンと同じ考えだった」
「そうか・・俺がやはり先走ったか・・」
「かまわない、誰にも言わない。シンがそう思うなら俺は黙る。エライ班長やシリマツ官吏にも言わない」
「俺もさ・・ショウもそうだろ?」