第二章その二 塔動く
「やあ、忙しい所を呼び出して申し訳無い。どうだ?あれから間欠泉の記録は順調に進んでいるかね?」
「いえ、定期的な記録は、勿論つけておりますが、大きな変化がどう言うものなのか、また変化がどう言う事なのかと、分析出来る何も今資料もありませんから」
「尤もだ。それは我々も同じ事であって、勿論観察だけが役務では無いから、護衛やら、周囲の探索やら、四方網に定期的に入る鹿などの捕獲など、やる事は沢山ある。だから、実働部隊の我々が雑務に追われて、元のもくやみ状態になっている。サイレント連射銃はどうやらある程度の数が出来たらしいし、旧鉱山にはまだアンチモンの脈が残っていて、それから弾などをどうにか製造する事も出来ているようだがね・・あくまでそれは、目的では無くて、我々が自衛するべき手段としてのものなのに、何故かそう言う方面だけ積極的に行われ、開発も早い・・」
組織に対し皮肉めいた言葉をエライ班長は吐くが・・シンには答えようも無い。
「はあ・・」
シンは相槌を打つものの、そんな話をするために呼び出した訳でも無かろうが、シリマツ官吏とマコト副長の5人と言う会議は少し異例でもあった。
「ところでね?君の所に、少し前に化学分析班の遠藤班長が、電動車でやって来たと聞くけど要件は何だったのだね?少し異例の事だったから確認しとこうと思ってね」
「あ、はい。もともとヤマイと生物分析班、化学分析班は繋がっている事なので、全長30Mもの大蛇が何故居たのかとか、象が5頭今いますが、どうして5頭なのだろうかと、そんな話題でした」
「ああ・・成程・・確かに、あれから大蛇に遭遇もした事は無いし、あの大蛇は異常にでかかった。不思議な事だよなあ」
「象もですが・・」
「ああ・・象もね。でも、以前の見解では、象は動物園で飼育されていたものが逃げ出したと見ていたし、大蛇もそうでは無いのかな」
「確かに飼育されていた事はそうなんでしょうね。ですが、彼の見解では、ドーム内で飼育されていたのでは?と言う根拠と対照的に、その動物園から逃げ出した根拠への疑問でした」
おっと、そこを言うのかよと言うランの反応が微妙にあった。そんな事を隠してどうなるんだよと言う無言の目線を彼に送り、シンは続けた。
「ドーム内で飼育?ほう・・それは新説だ。そう言う話題だったのか」
「あり得る話だと思いませんか?エライ首班」
「無いとは言えないな、しかし、我々にはそんな事を確かめる手段が無いのだよ」
「シン班長・・貴方の見解はいかがですか?何も無くて、遠藤班長がそんな話題を持って来るのも、確かにヤマイ君と面識があったにしても、少し違和感があるんですが」
シリマツ官吏も、今はシンが班長の立場だ。敬語で喋っている。
「違和感?そうは思いませんが、確かに新説だなと思う事と、大蛇の件をしきりに尋ねていましたので、むしろそっちの興味かと・・異常なでかさと言う事は、大きな分析上の疑問でしょうしね。それ以外の事を聞かれても、専門外なので分かりません。ははは」