第二章 ドーム外編
マコト副長が言った。今も第13班の副長である。
「そうだ。何故こんな話を今ここでするのかと言えば、生物武器に対しても非常に日本人は細やかだ。技術に関しては世界一だと言えるそんな国が、何重にも工夫し開発したのが、ドーム組成や、生物兵器。そして、更にその生物兵器にしても人間を襲う事も想定し、大葉と言う忌避植物を植えた。もともと自然界の植物を、品種改良した訳だ。そして山切りの木は、既に亜熱帯気候になっていた日本の気候に合い、やはりオオコウモリによる忌避植物として利用された。規則正しく植えてあるのは、やはりそこは日本人らしいと言えばそこまでになるが、ある計算があった」
「計算?」
「そうだ。今の我々の分析出来る機械では、限界がある。すでにメインコンピュータとつながっていたAIや国の収蔵データ保管庫などは、電磁パルス爆裂によって、接続が断絶した。あらゆる施設も繰り返し発生する高空からの電磁パルス爆裂により、一瞬で破壊されたのだよ。だから、これも滑稽な話になる。その電磁パルス衛星も互いの攻撃により、今の時代には一つも残っていないだろうと最近になって分かった、そう言う文書が出て来たのだよ」
「もう、今は電磁パルスが発生していないのですか?」
「ああ・・連鎖的に世界同時多発的に、一瞬でそれは地球全体を覆った。それだけ強烈な電磁パルスがありとあらゆる建物すらも破壊したのだよ。しかし、それは動物達に壊滅的なダメージを与える事となった。動植物・建造物、あまねく全てのものだ。それが、現実である」
「じゃあ・・人間がこの野外で生きている可能性はありますか?」
「いや、今言ったように無いだろう・・通信、生活基盤・・全てその時代の人間社会ではロボット、AIに頼り切っていた。知能の低下、運動機能の低下の退行傾向が見られた。ほとんどの未開国が、その時には原始社会のような生活などをしていなかったんだよ。その状態で仮に、鉱山の坑道のような所で生き延びたとしても、食糧の問題や、そんな脆弱な生命力しか持ち得なかっただろう人類が生き残れる可能性は極めて低い。つまり、奇跡的に武器を我々は野外で手中にしたが、原始的な武器すらも、もはや創り出す事の出来ない人類が、またこの非力な我々人間が、弱肉強食の世界の動物界で生き残れると思うかね?逆に問うが」
「しかし、希望は持ちたいです」
「ああ・・それは、勿論だ。そう願うのは、私も同じだ。だが、話を戻そう。この塔が何のために存在し、あるかと言う事だ。日本人の勤勉さとやはり細かい部分まで研究し、探求する・その気質は素晴らしいと思うんだよ。時には非常にやっかいで争いのもとにもなるだろうが、実行できる几帳面さと辛抱強さがある。これは我々民族が誇っても良いと思うんだ。その当時の世界は、確かに混血が進み、各国人種と言う壁は無かったかも知れない。しかし、日本で生まれ育って来た者達は、そのDNAのどこかに刻まれたそう言う土台があると思うのだ。話がまた逸れた。そこで、この塔は何かと言う問いになる」
そこが一番重要だ。誰もがそう思っているが、今までそんなに進展が無かったのである。
「この塔の目的は、地下マグマによる間欠泉を利用した、熱力による発電装備では無いかと言う検証が出た」
「発電装備?でも野外では電気なんて・・」